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【スタイリングアドバイザーが語る無印良品】超長綿のブロードシャツ ②
2019/09/05
ものづくりの背景を伝えながら、一人ひとりに合った服選びや着こなしを提案する、無印良品のスタイリングアドバイザー。
お店でさまざまな相談を承ってきた彼らが伝える、無印良品の綿シャツの魅力を、連載でお届けします。
第2回は、「服のことを伝え、その中身を知ってもらうことを通じて、着る方が服を信頼し、好きになり、いつしか愛用品としてくれるような愛着の持てる商品を、着る方とともに探したい」という男性アドバイザーが語る、超長綿のブロードシャツです。
モデル身長:180cm / 着用サイズ:L
繊維が細い超長綿を双糸にし、生地の度目も詰めています。だから、しなやかで、なめらか。そして、透けにくい。
――超長綿のブロードシャツ、最初に抱いた印象は?
僕はこれまで公私を問わず、服に触れる機会が多かったのですが、この超長綿のシャツについては……強い言葉ですけれど、ホテルのシーツみたいだな、と感じたんです。
――わかります。肌触りが……この上質な感触はなんだ、というような。
それで、このなめらかさや手触りについて調べてみたところ、超長綿は実際にも高級ホテルの寝具に使われているような希少種の綿素材で、なめらかさに起因して寝心地が良く、眠りを楽しめるメリットもあることを知りました。
話がそれてしまいましたが、服の世界においても、繊維長の長い超長綿は、いわゆる高級な既製服ブランドで使われる綿花として知られています。本当に高額なシャツにも使われていて……繊維長が長い超長綿の性質そのものが、質の良さをもたらしているのかなと。
――素材の特性そのものに、上質さの背景が備わっているんですね。
ええ。そのうえで、実際の生活者として、このシャツを洗って着てということを繰り返してみたのですが、生地がしなやかで、なめらかで……言葉が重複してしまうのですけれど……。
――重複して、表現せずにはいられない?
そうです(笑)。繊維が細い特性の綿を、網目の度を詰めて生地にしているので、しなやかですし、さらに、しわになりにくいことも、実際に着て感じました。もちろん、しわにはならないということではないんですが、いやなしわ感ではない……シャツのしわを自然に楽しめると思いました。
もうひとつ感じたのは、透けにくいことです。生地の密度を高めているので、透けにくくなっています。
――白いシャツが透けにくいのは、単純に着こなしやすくて、良いですね。
白いシャツについては、インナーになにを合わせれば良いかという問い合わせが、男性女性を問わず、多いんです。たしかに見えてしまうと不格好ですよね。透けにくいということは、合わせるインナーを、あまり選ばなくて良いということです。
さらに、透けにくいことに加え、度目を詰めたことによって、より丈夫になったという側面もあります。
――表情は繊細なのに、日々の使い心地については、丈夫だと。
超長綿のシャツは、細い二本の糸を撚り合わせて、一本の糸にして仕立てる“双糸仕立て”になっています。単純にもともと細い繊維をより強く撚っているので、生地もかなり密度が増し、繊細な表情が表現できているんですね。そのうえ、細い糸はしなるので、折りじわも入りにくいということです。
考え抜かれたという、襟のかたち。本当に誰にもなじみやすい、ベーシックなかたちだな、と。
――この、シャツの白い色が、きれいだなと思いました。
それは僕も感じました。透けにくいということもあるのですが、あわせて白の美しさ……発色というんでしょうか。シャツの白が放つ質の高さはあると思うんです。それこそ、いわゆるクラスの高いシャツに勝るとも劣らないテクスチャー、手触りと合わせて、色味の魅力はあるなと感じました。
――お手入れは、気を遣いますか。
僕は洗いざらしで、そのまま着ているので、気を遣うとは感じません。また、先ほども触れましたが、生地の密度が高いので、しわになりにくいという側面がありますから。
――しわの表情が良いことや、洗濯のしわが残りにくい性質も、織りや糸そのものに理由があるんですね。
はい。ふだんシャツをブラウジングしたり、袖をまくったときに気になるのは、意図しない生地の硬い浮きだと思うんです。その点、この超長綿のブロードシャツは、しなやかに、きれいに浮かずに落ちてくれる、いわゆる“落ち感”が楽しめるのも、良いと思いました。
――このブロードシャツは、表面と裏面とで、肌触りが異なります。
表面と裏面の違いについては、表面を微起毛に加工して、カジュアルな印象に仕立てたと聞きました。元のコンセプトは、洗いざらしでカジュアルに着るシャツ、ということなので、日ごろの着こなしに取り入れやすい仕立てですね。
一方で、しっかりとした場所に行くときには、アイロンをかければ、本当にドレッシーな装いに決まります。
――別の魅力も引き立ちそうですね。
魅力といえば、襟のかたちにもこだわっていると聞いています。きれいめに着こなしたいときなどに、ボタンをすべて閉めると見えてくる、襟の剣先。
これが跳ね上がってしまわないように、襟型と襟の芯地を改善したということだったので、本当なのかと思い、襟を閉めて着るスタイリングも好きなので、試してみたんです。そうしたら、実際にもきれいにキープされた状態が続いた。もちろん、糊が入ってるということではないです。
――たしかに、襟の先がきれいに伸びています。
その剣先だけでなく、襟のかたちそのものも、考え抜かれて、ここにたどり着いたそうです。ニットやジャケットと合わせるとき、一枚で着るときなど、どんなスタイルでも襟の収まりが良いように。
それは実感として、僕もわかりました。シャツの襟って本当に千差万別で、いろんなかたちがあるのですけれど、このかたちは本当に誰にもなじみやすい、ベーシックなかたちだなと……あらためて、無印良品の服を代表するアイテムなのだな、と思いました。
一見、ふつうに見えるけれど、こだわり抜かれたもの。“寄り添うシャツ”だなと、着ていて感じます。
――話を聞いていて、なにより、“着やすいシャツ”なのだな、と感じました。
そうですね。その中でも、いちばん重要だと思っているのは、着合わせの汎用性だと思っています。白いシャツは、やはり定番の服ですから。
いま世の中では、ワイドシルエットが流行っていたり、細身のものが出ていたりします。そんな中、レギュラーシルエットとうたって、いろんな人に着てもらえるものを、無印良品の代表的な商品である白シャツとして出すこと自体にコンセプトを感じるなと……そこも、すごく魅力ですね。
お店に来る方はみなさん、シャツについては、それぞれが自分の体に合ったサイズ感のものを探してるんです。
――そういったすべての方に、定番のかたちはこれです、と差し出せるシャツなのだと。
このシャツについて、お店に立っていていちばん感じるのは、みなさん合わせやすいのかな、と。
白いシャツは、だれでもワードローブに一枚は持っている服ですよね。そういったスタンダートな服で、かつ無印良品の服というと、過度に飾り立てることではなく、簡素なたたずまいで着る人のパーソナリティを表現するような、そういうベーシックさが強みだと思っているんです。
その極みでもある白いシャツに求められることも、こういうニュートラルな、誰にでも合わせやすい、ということなのかと。
――普遍的な、記号のようなシャツのかたち?
一見、ふつうに見えるけれど、こだわり抜かれたもの、ですね。
こだわると言えば、一つひとつ、超長綿の栽培から始めたという話もそうです。素材にこだわるというアプローチで、シャツをひとつの定番のかたちにしたということには、すごく感動しました。
――ファッションというより、くらしになじむ、生活の道具のような。
そうです。単純に難しいことを抜きにして、“寄り添うシャツ”だなということを、着ていて感じます。生地の感じだとか、かたちの感じ良さだとか……。
かたちといえば、裾の長さ、つまり着丈も絶妙です。
きれいめでも、カジュアルでも、裾を外に出して着たときに自然な、長すぎないシャツ……ビジネスシャツだと裾を入れることを前提につくられているので、タックアウトすると長すぎて、だらしなく見えてしまったりすることが多いのですが、それがない。一方で、裾を入れてもきれいに収まるので、吊り革を持つような日々の動作で、腕をあげたときに裾が出てこないのは、良い点だと思います。
ほかには、摘まみやすいよう、おはじきのかたちを参考にして、裏側に溝をつけたボタンにしてもそうですが、そういったこだわりのひとつひとつに、このシャツの汎用性の高さが際立っていると感じました。
白いシャツを着るのは、“素”になるとき。シャツは、肌の次に自分に近いもの、という感覚があります。
――超長綿のブロードシャツ、おすすめの着こなしはありますか。
着合わせについては、先にもお伝えした通り、ニットにしてもジャケットにしても収まりが良く、アイテムを選ばない側面があります。ただ、白いシャツはどういった着こなしも得意なので、おすすめとなると難しいですね。
撮影では、シャツをそのままのかたちで見せたくて、僕の適正サイズを選びました。ただ、ふだんの着こなしでは、さらにサイズをあげて、オーバーサイズで着ています。
それは先ほどの、生地がなめらかに落ちる“落ち感”の話にもつながるんですけれど、大きめの着こなしでも、すごくきれいに肩が落ちたりだとか、きれいにシルエットが広がってくれるんです。そういった意味ではむしろ、その人それぞれで好みのサイズ感を選んでもらうのも、良いかもしれません。
店頭では、女性の方が男性のシャツを求めることも多いんです。
――いまの時代は、大きめに着たい気分がありますね。
そういったトレンドに即して使うこともできるし、一方では、年配の方や適性サイズを買いたい人にも寄り添って合わせることができる……それがこのシャツの魅力かなと思います。
――誰にでも似合う白いシャツは、それゆえに、その人自身が前面に出てくる服でもあります。
ああ、それはそうですね。自分勝負みたいなところは、あると思います。
白シャツについては、比較的スタンダートな格好を好む方が買っていくように感じます。チノボトムでもストレートを買うような……以前も話したんですが、オーセンティックな、王道の格好をする方。そういう人は絶対に一枚持っていますし、着ていますね。
――ちなみに、いち個人として、ほかの白いシャツではなく、この超長綿のブロードシャツを着るのは、どんなときですか。
そうですね……すごく言葉の表現が難しいのですが、まさに……“素”になるとき、という感覚だと思います。すごく難しいんですよ、こういう話って(笑)……でも、簡潔な表現ができなくて。
――少なくとも、着飾っているということではない?
そうではないです。着飾るとなると、きっとかたちも色も変わると思いますから。
だから、高揚感や緊張感でもなくて……素のままだ、ということは、すごく感じます。なんていうのかな……。
――男性は女性に比べて、若いころからシャツを着る機会も多かったとは思いますが……日常とも、非日常とも、言い難いような?
難しいですね……僕にとっては、白いTシャツを着るときと同じ気分なんです。Tシャツもそうなのですが、シャツは肌の次に自分に近いもの、という感覚は、とても強くて。
その意味では、白いシャツが白いTシャツに近いだとか、あるいはパーソナリティがどうしても出てしまうだとか、そういう感覚はわかります。
――なるほど……男性のほうが圧倒的に、くらしの中でシャツを着てきたのでしょうね。それこそ、歴史の中で代を重ねて、遺伝子レベルで、シャツを着てきたのかなと。
そうですね……遺伝子レベルで男はシャツが好きです、と書いておいてください(笑)。
きっと、シャツに対する考え方が違うんでしょうね。女性から、白いシャツは気分があがるというような話を聞くと、女性にとっては特別な服なのかもしれないと感じます。けれど、男性はシャツを道具をして捉えますから。
――いうなれば、男は白いシャツを、幾つになっても着続けるものだ、と。
その感覚は、すごくありますね。エイジレスで、同じシャツをずっと着続けるのだろうなと。
白いシャツを買おうと思ったら、無印良品が浮かぶし、無印良品と聞いたときにも、白いシャツが浮かびます。
――以前、女性は白いシャツに自分らしさを盛って表現できる、という話を聞いたことがあります。ただ、男性には、そういった装飾もなくて。
男はもっとシンプルになるので、まさに素、ですね。
男が着る白いシャツは本当に、そのままとしか言えないところはあります。
――自分であることを、そのまま包むもの、というような。
やっぱり、素……“素のまま”なんですよ。
それこそ、白いシャツを買おうと思ったら、無印良品が浮かぶと思うし、無印良品と聞いたときにも、白いシャツが浮かぶと思うんです。そういうことですよね。その“無印良品”という四字熟語にも叶った存在感があって……白いシャツということの在りようの定義が、無印良品そのものでもあるような。
――白いシャツは、おもしろいですね。
“ふつう”なんですけどね。じつは僕が今回の撮影で袖をまくらなかった理由も、ふつう、ということの表現を目指したくて。
でも、ふつうというのは、めちゃくちゃ伝えるのが難しいじゃないですか。しかも、とてもこだわってかたちにした、“ふつう”ですから。……それで、引いている感じがいいのかなと思い、あえてそのまま着ているというディレクションで、撮影をお願いしました。
――なるほど。それにしても、白いシャツを着た人物写真は、その人自身が強く出てしまうものですね。肖像画のような……半生記に添えるポートレートを撮るなら、白いシャツを着るのだろうというような。
そうですね。白いシャツはポートレート……たしかに完成された人って、白いシャツを着ているイメージがあります。白いシャツを着こなす人は、本当に自信がある人だと思います。
――憧れますね。……白いシャツの着こなし、まだ盛っていたいです。まだ、素にはなれない。
さっきの僕、素になるときの服だとか言ってましたね(笑)。……白いシャツ、もっと着たいと思います。人生の大テーマですから。
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