めぐるものがたり 読み物|染める人・洗う人 「天然素材だからこそできること」

ReMUJIが始まった当初から、服の染めと洗いを担っている工場は、国産ジーンズ発祥の地・岡山県で60年以上にわたってデニム加工を手掛けてきた会社です。以前から自身の愛用の服を染め直して着続けているというこの会社の社長は、「『染めなおした服』はとても無印良品らしい商品」だと言います。

「なぜなら、染め直しは綿や麻などに適した加工で、無印良品には天然繊維にこだわって商品を展開してきたという際立った特長があるからです」

ただ、回収品の染めというのは、この会社にとっても初めての試みでした。回収した服はそれぞれ生地が異なるため、同じ染料を使って同じように染めても、仕上がりが異なります。試行錯誤を重ね、ReMUJIの「染めなおした服」は生まれました。

「染め直しや洗い張りというのは、日本の着物の世界では昔からある手法です。その発想で、回収した服に新しい価値を生み出しているわけですが、10年続けてこられたということは、それをお客様に喜んで受け取っていただけているということ。加工屋冥利につきます」

  • 染め直しを行う工場では、無印良品の倉庫から届いた服をチェックしてどの色に染めるか分け、約20着ずつ洗濯ネットに入れます。
  • 洗いと染めを一気に行う機械。
  • 染料。染める色に合わせて配合します。
  • 工場があるのは、のどかな風景が広がるなかにジーンズづくりにまつわる工場が集まっている地域。
  • 染料を調合し、お湯で溶かします。溶かしたものを機械に入れて、染めます。
  • この工場では水のリサイクルに取り組んでいます。処理を施した水は飲料可能なレベルに。

より良い仕上がり、
より良いものづくりを目指して

工場には、専用の巨大な機械が並びます。でも、染料の調合や検品など、手作業の工程も少なくありません。特に検品は、かたちも作りも異なる一着一着を手際よくきれいに畳みながら、染めムラや破れが生じていないか目で確認。タグを付けながら、「これは顔ですから」と表向きに揃えます。最後に検針機を通したら、数えながら箱詰め。作業をされている方々は「一つひとつ違って面白いな、素敵だなと思いながらいつも作業をしています」と話してくれました。

この会社のこだわりは丁寧な作業だけではありません。染めや洗いに使った水をほぼ100%リサイクルしているのです。工場に併設した処理施設では繊維や染料を沈殿させ、バクテリアによる分解を経て、2020年に導入した三次処理設備で濾過します。処理を施した水は、水道水と同レベル以上の基準値をクリア。水がなくては成り立たない染め・洗いという加工の持続可能性を目指し、ずっと取り組んできたことだと、次世代を担う後継者が教えてくれました。

工場の中に戻ると、今回加わった新色のグレーに服が染め上がっていました。

「グレーは生地による色の差が一番出るので難しかったですね。『染めなおした服』は同じ色でも一つひとつ違うのが魅力ではありますが、なるべく精度を上げて、みなさんにより良いものをお届けしたいと思っています。そして、回収した服を生かして商品を作るReMUJIの取り組みから、より良いものづくりのかたちができればいいなと思っています」

  • 染めと洗いの工程を終えたら、高温で乾燥させます。
  • 乾燥を終えたばかりの「染めなおした服」、色はグレー。
  • 工場のスタッフが着用していたジーンズ。履き込まれ繕われ、味のある一本でした。
  • 染め上がった服を一点一点、検品。畳みながらポケットを整え、飛び出ている糸を切ります。
  • 服に取り付けられるのを待つタグ。
  • タグは検品・畳みの作業と同時に、手作業で取り付けます。最後に丁寧に表向きに揃えて。

ReMUJIの話 | 染め直して生まれた魅力