(閉)イデー東京
【IDÉE TOKYO】アーティスト・高山夏希 インタビュー(第3章)

2022/07/13
IDÉE TOKYOに併設するIDÉE GALLERYでは2022年6月24日(金)から7月25日(月)まで、アーティスト・高山夏希さんの個展を開催中です。これに際して高山さんにお話しを伺いました。
第1章 作品のテーマ
第2章 現在のように制作するようになっていったきっかけ
第3章 アーティストとして活動する上で大切にしていること
<第3章 アーティストとして活動する上で大切にしていること>
“誠実に作品をつくって出していきたい”
―2016年に大学院卒業されてから多くの展示会を開催されてますね。いろんな新人作家さんから「世の中への出方がわからない」という話も聴くのですが、世の中へ出ていくために高山さんが大事にされていることはなんでしょうか。
やらなくてもいいけど、やったほうがいいことをするが大事なのかなと最近は思います。私はSNSが得意ではないんですけど、インスタ見て展示を観にきたよと話してくれる人はやっぱり多いし、同世代の作家さんでもSNS苦手なんだよねって話す子もいますよ。
もちろんやらなくてもいいと思います。けど、より多くの人に伝えられるかもしれないチャンスでもあったり、その努力というか、やらなくてもいいけどやったほうがいいよねってことは、ちゃんとやろうと思っています。
作品を展示することだけでも、ステートメントがなくても成立しちゃうけど、すごく時間がかかるけど、展覧会準備期間が短くても必ず書くということを、自分の課題にしていたりします。ものすごく小さい努力のところで次の展覧会への道が開けると思います。だから連絡を取ったり、誘われたらなるべく会ったりするようにしているんです。それで意外にマメだねと言われます。
田舎で広いアトリエっていう手もあるけど、地盤がしっかり固まるまでは誘われた時は出かけられるようにしておきたいなと思っているので都内にアトリエを構えています。奇跡的に見つけて、オーディションのような内見を受けて入居しました。
(自然光が入る高山さんのアトリエは、都内にあるとは思えないほど静か)
(アクリル絵具を削る作品を制作する際に生まれる副産物。断面が非常に美しい)
(制作中の様子。色が気配を帯びて美しい)
―広まっていくなら、SNSなり誘われた時に行きたいなと思うんだったら、フットワーク軽く動いていったほうがいいんですね。
距離が理由で行かないくらいなら行ける距離にいたほうが展覧会のきっかけになります。SNSも頑張ることで制作が怠るくらいならやらない方がいいけど、バカにはならないです。SNSに詳しいひとからアドバイスをもらったことがあって、ハッシュタグを10個つけるとか、そういうアドバイスを受けました。
私は自分を出して売れていくというよりかは、誠実に作って作品を前に出してやっていきたいんです。そこは間違えなくてよかったなと思います。自分の特質っていうか、どういう作家としてありたいかをしっかりもってないとSNSの使い方は怖いです。
それと、作家って展示会ごとに展示する場所がぜんぜん違うじゃないですか。私だったらイデーだったり、ブルックスブラザーズだったり。自分が小さいころから見ていたものだったり、関心あるものだったり、興味分野の方から展示の声を掛けてくださっています。自分を形成してきたアイデンティティを模索したことで、自分らしい作品制作を生んで、今タイムスリップして一緒に展覧会をしてるような不思議な感覚があります。
―高山さんのお話しを伺うと、制作されているのはとても公共性の高い作品ですね。
作るときの実感として私個人の内的な感情を含む体験を大切にしているんですけど、私の問題意識も誰かの問題意識と少なからずつながっているのではないかと思っています。ステートメントにしても個人的な問題意識を読ませてしまうのではなくて、客観性を意識して表現にしています。押し付けるのではなくて、美術を通して、一緒に考えられればという態度でいます。
とにかく家みたいな、帰る場所みたいなのを作りたいというのがベースにあります。少なからず、誰しも孤独や居場所のなさ、喪失感を感じているのではないかと思います。そうした時に、誰かの居場所になるような、開かれた場所になればと願いながら作品を制作しています。
―これほどエネルギーを放つものを作るには高山さん自身のなかにエネルギーがないと作れないと思います。作り終えたあとはすごく疲れるのではないでしょうか。
はい、疲れないといえば嘘になります(笑) でも、自分の納得できる作品や展覧会ができた時、気持ちよさのようなものに逆転します。
要領が良いわけではないので、無茶をしちゃうこともあります。でも今までの制作に纏わること、大変だったなーと同時に、「あー、やってよかった。」ってやっぱり思えるんです。そうは言っても身体はひとつなので、ひとりでやりすぎて身体に無理が生じないようにも最近では気をつけています。永く制作したいです。ステートメントを書いても、作品をつくっても、実生活で身近なひとを大切にできなければうさんくさいじゃないですか。だからコンディションを整えて両立できるように気をつけています。
(いつお会いしても穏やかに話をされる高山さん。この日もハンドドリップのコーヒーをいただきながらお話しを伺った。)
―どうやってコンディションを整えていますか?
私はすごい鈍感で、鈍感だからこそここまで動けているのもあります(笑)「これ以上はやらない、できない」って基準も誰かが決めてるような気もして。人と会うと決めたときには負の気持ちにならないって決めています。鈍感であろうとしてることで整えてるのかもしれません。時間をいただいているというのもありますけど、自分が後悔していたらモチベーションも下がるし、自分が使おうと思った時間で相手も不快になってほしくないんです。結果どんな時間を過ごしても、自分で決めた時間の中では、何かしら意味があったんだって思って意識して次に進もうと思うようにしています。
私の周りには膨大に仕事をする人が多いんですけど、会う時間を設けても、早く終わらせたいみたいな緊迫した空気も出さない姿を尊敬しています。そういうすごい忙しいひとたちを見ているので自分はそんな忙しくないって思っています。
あとはネガティブな人から影響受けないように気を付けています。ネガティブな思考を聴くとネガティブな思考に変化していくので、ネガティブ思考に引っ張られないようにアホになるというか。ネガティブ思考にならなければ頑張れる。だから展示前にだけはネガティブ思考になるべく出会わないように気をつけています。頑張れるはずなのに頑張れないマインドになるのはもったいないですから。
―ポジティブであろうとするというよりも、ネガティブさに触れないようにする工夫をされているんですね。
ネガティブ要素を排除していくと問題意識が生まれなくなってくるんです。悩むような人とも、その人と会いたいなと思うようであれば会うようにしています。ネガティブに触れない平和ボケにも恐怖感を抱きます。悩みがなくなることはないと思うんですけどね。触れてしまっても少しでも前進できればって思います。
―創作の資源がなくなることへの危機感があるんですね
ありますね。部屋にこもって制作するだけでは、狭い世界の中だけで物事をみてしまうことが習慣化してしまうかもしれないという危機感を感じます。作品ってひとの精神の塊だから、外にも触れつつ、それがなくなってしまうとすごく表層的なものになってしまうんです。ストレス抱えるときもあるんですけど、関わって理解できなくてもそれがなぜなのかを考えます。
あとは作ることは好きなんですけど、それ以外のことが疎くって。料理や食事も時間が際限なくあればやるんですけど、判断することが制作のなかでありすぎて、制作メインになってきたときにおろそかになります。心身整えるのも仕事と思わないとですね。好きだからやるっていうよりかは、気にしてやるようにしてます。なので忙しいときには小学生がうらやむような食事ばかりしちゃいます。
―これから先も高山さんは発表を続けていくことと思いますので、ぜひ心身は大事にしていただきたいです。今日はお時間いただきありがとうございました。
(アトリエ内に漂う心地のよい空気感は、高山さんが美しい作品を作り続けてこられたからこそ。床に広がる絵具のあとも美しい。)
(アトリエの庭には多くの樹が育っており、四季に応じた移り変わりも楽しまれているそう)
多様な解釈や見方ができる高山さんの作品。“家みたいな、帰る場所みたいなものを作りたい”というお話しのとおり、そこにいると気持ちが落ち着いて本来の自分が還ってくるような感覚が湧いてきます。すこし今しんどいかもしれないという方にも、ぜひ一度ご覧になっていただきたいです。
高山さんの展示会は2022年7月25日(月)までIDÉE TOKYO併設のIDÉE GALLERYにて開催中です。7月18日(月祝)には在廊もされているので、ぜひお越しください。
*展示会場の様子はこちらをご覧ください。
第1章 作品のテーマ
第2章 現在のように制作するようになっていったきっかけ
第3章 アーティストとして活動する上で大切にしていること
instagram
IDÉE TOKYO @ideetokyo
高山夏希さん @natsuki_takayama
【Natsuki Takayama Exhibition “black view” 】
会期 2022年6月24日(金)~7月25日(月)
時間 10:00 - 21:00
作家在廊日 7月18日(月・祝)
<お店への行き方>
○場所
東京都千代田区丸の内1-9-1
JR東日本東京駅改札内
グランスタ東京 B1F スクエアゼロエリア 48番
①丸の内地下中央口から
改札入場後、銀の鈴待ち合わせ場所方面に直進。左手のはせがわ酒店を越えたら左折して直進。ピエール・エルメ隣。
②グランスタ地下北口から
八重洲・丸の内連結通路途中のグランスタ地下北口から入場し直進。右手のガトーフェスタ・ハラダをこえて左手。

第1章 作品のテーマ
第2章 現在のように制作するようになっていったきっかけ
第3章 アーティストとして活動する上で大切にしていること
<第3章 アーティストとして活動する上で大切にしていること>
“誠実に作品をつくって出していきたい”
―2016年に大学院卒業されてから多くの展示会を開催されてますね。いろんな新人作家さんから「世の中への出方がわからない」という話も聴くのですが、世の中へ出ていくために高山さんが大事にされていることはなんでしょうか。
やらなくてもいいけど、やったほうがいいことをするが大事なのかなと最近は思います。私はSNSが得意ではないんですけど、インスタ見て展示を観にきたよと話してくれる人はやっぱり多いし、同世代の作家さんでもSNS苦手なんだよねって話す子もいますよ。
もちろんやらなくてもいいと思います。けど、より多くの人に伝えられるかもしれないチャンスでもあったり、その努力というか、やらなくてもいいけどやったほうがいいよねってことは、ちゃんとやろうと思っています。
作品を展示することだけでも、ステートメントがなくても成立しちゃうけど、すごく時間がかかるけど、展覧会準備期間が短くても必ず書くということを、自分の課題にしていたりします。ものすごく小さい努力のところで次の展覧会への道が開けると思います。だから連絡を取ったり、誘われたらなるべく会ったりするようにしているんです。それで意外にマメだねと言われます。
田舎で広いアトリエっていう手もあるけど、地盤がしっかり固まるまでは誘われた時は出かけられるようにしておきたいなと思っているので都内にアトリエを構えています。奇跡的に見つけて、オーディションのような内見を受けて入居しました。





―広まっていくなら、SNSなり誘われた時に行きたいなと思うんだったら、フットワーク軽く動いていったほうがいいんですね。
距離が理由で行かないくらいなら行ける距離にいたほうが展覧会のきっかけになります。SNSも頑張ることで制作が怠るくらいならやらない方がいいけど、バカにはならないです。SNSに詳しいひとからアドバイスをもらったことがあって、ハッシュタグを10個つけるとか、そういうアドバイスを受けました。
私は自分を出して売れていくというよりかは、誠実に作って作品を前に出してやっていきたいんです。そこは間違えなくてよかったなと思います。自分の特質っていうか、どういう作家としてありたいかをしっかりもってないとSNSの使い方は怖いです。
それと、作家って展示会ごとに展示する場所がぜんぜん違うじゃないですか。私だったらイデーだったり、ブルックスブラザーズだったり。自分が小さいころから見ていたものだったり、関心あるものだったり、興味分野の方から展示の声を掛けてくださっています。自分を形成してきたアイデンティティを模索したことで、自分らしい作品制作を生んで、今タイムスリップして一緒に展覧会をしてるような不思議な感覚があります。
―高山さんのお話しを伺うと、制作されているのはとても公共性の高い作品ですね。
作るときの実感として私個人の内的な感情を含む体験を大切にしているんですけど、私の問題意識も誰かの問題意識と少なからずつながっているのではないかと思っています。ステートメントにしても個人的な問題意識を読ませてしまうのではなくて、客観性を意識して表現にしています。押し付けるのではなくて、美術を通して、一緒に考えられればという態度でいます。
とにかく家みたいな、帰る場所みたいなのを作りたいというのがベースにあります。少なからず、誰しも孤独や居場所のなさ、喪失感を感じているのではないかと思います。そうした時に、誰かの居場所になるような、開かれた場所になればと願いながら作品を制作しています。
―これほどエネルギーを放つものを作るには高山さん自身のなかにエネルギーがないと作れないと思います。作り終えたあとはすごく疲れるのではないでしょうか。
はい、疲れないといえば嘘になります(笑) でも、自分の納得できる作品や展覧会ができた時、気持ちよさのようなものに逆転します。
要領が良いわけではないので、無茶をしちゃうこともあります。でも今までの制作に纏わること、大変だったなーと同時に、「あー、やってよかった。」ってやっぱり思えるんです。そうは言っても身体はひとつなので、ひとりでやりすぎて身体に無理が生じないようにも最近では気をつけています。永く制作したいです。ステートメントを書いても、作品をつくっても、実生活で身近なひとを大切にできなければうさんくさいじゃないですか。だからコンディションを整えて両立できるように気をつけています。

―どうやってコンディションを整えていますか?
私はすごい鈍感で、鈍感だからこそここまで動けているのもあります(笑)「これ以上はやらない、できない」って基準も誰かが決めてるような気もして。人と会うと決めたときには負の気持ちにならないって決めています。鈍感であろうとしてることで整えてるのかもしれません。時間をいただいているというのもありますけど、自分が後悔していたらモチベーションも下がるし、自分が使おうと思った時間で相手も不快になってほしくないんです。結果どんな時間を過ごしても、自分で決めた時間の中では、何かしら意味があったんだって思って意識して次に進もうと思うようにしています。
私の周りには膨大に仕事をする人が多いんですけど、会う時間を設けても、早く終わらせたいみたいな緊迫した空気も出さない姿を尊敬しています。そういうすごい忙しいひとたちを見ているので自分はそんな忙しくないって思っています。
あとはネガティブな人から影響受けないように気を付けています。ネガティブな思考を聴くとネガティブな思考に変化していくので、ネガティブ思考に引っ張られないようにアホになるというか。ネガティブ思考にならなければ頑張れる。だから展示前にだけはネガティブ思考になるべく出会わないように気をつけています。頑張れるはずなのに頑張れないマインドになるのはもったいないですから。
―ポジティブであろうとするというよりも、ネガティブさに触れないようにする工夫をされているんですね。
ネガティブ要素を排除していくと問題意識が生まれなくなってくるんです。悩むような人とも、その人と会いたいなと思うようであれば会うようにしています。ネガティブに触れない平和ボケにも恐怖感を抱きます。悩みがなくなることはないと思うんですけどね。触れてしまっても少しでも前進できればって思います。
―創作の資源がなくなることへの危機感があるんですね
ありますね。部屋にこもって制作するだけでは、狭い世界の中だけで物事をみてしまうことが習慣化してしまうかもしれないという危機感を感じます。作品ってひとの精神の塊だから、外にも触れつつ、それがなくなってしまうとすごく表層的なものになってしまうんです。ストレス抱えるときもあるんですけど、関わって理解できなくてもそれがなぜなのかを考えます。
あとは作ることは好きなんですけど、それ以外のことが疎くって。料理や食事も時間が際限なくあればやるんですけど、判断することが制作のなかでありすぎて、制作メインになってきたときにおろそかになります。心身整えるのも仕事と思わないとですね。好きだからやるっていうよりかは、気にしてやるようにしてます。なので忙しいときには小学生がうらやむような食事ばかりしちゃいます。
―これから先も高山さんは発表を続けていくことと思いますので、ぜひ心身は大事にしていただきたいです。今日はお時間いただきありがとうございました。




(アトリエ内に漂う心地のよい空気感は、高山さんが美しい作品を作り続けてこられたからこそ。床に広がる絵具のあとも美しい。)

多様な解釈や見方ができる高山さんの作品。“家みたいな、帰る場所みたいなものを作りたい”というお話しのとおり、そこにいると気持ちが落ち着いて本来の自分が還ってくるような感覚が湧いてきます。すこし今しんどいかもしれないという方にも、ぜひ一度ご覧になっていただきたいです。
高山さんの展示会は2022年7月25日(月)までIDÉE TOKYO併設のIDÉE GALLERYにて開催中です。7月18日(月祝)には在廊もされているので、ぜひお越しください。
*展示会場の様子はこちらをご覧ください。
第1章 作品のテーマ
第2章 現在のように制作するようになっていったきっかけ
第3章 アーティストとして活動する上で大切にしていること
IDÉE TOKYO @ideetokyo
高山夏希さん @natsuki_takayama
【Natsuki Takayama Exhibition “black view” 】
会期 2022年6月24日(金)~7月25日(月)
時間 10:00 - 21:00
作家在廊日 7月18日(月・祝)
<お店への行き方>
○場所
東京都千代田区丸の内1-9-1
JR東日本東京駅改札内
グランスタ東京 B1F スクエアゼロエリア 48番
①丸の内地下中央口から
改札入場後、銀の鈴待ち合わせ場所方面に直進。左手のはせがわ酒店を越えたら左折して直進。ピエール・エルメ隣。
②グランスタ地下北口から
八重洲・丸の内連結通路途中のグランスタ地下北口から入場し直進。右手のガトーフェスタ・ハラダをこえて左手。
