市場に流通している枝豆の多くは、流通上の問題や、口に含んだ時の口触りなどの理由からサヤに生える毛をなくすように品種改良されてきました。一方の毛豆は見た目の改良を加えることなく、代々美味しいと思う豆を選抜しながら、昔ながらの良さを保ってきました。
青森県民は「毛深くてこその毛豆、毛こそうまい枝豆の証」と信じ、愛情を込めて「毛豆」と呼んでいます。かつて毛豆を育て、種を採る担当だった各家のお嫁さんたちが家族のためにいかに旨い豆を育てるかを競い合ってきたと言われ、この競い合いによって毛豆の味が向上してきた、とも言われています。
毛豆を青森の特産品のひとつとして広く知ってもらいたい、と2011年に設立された「青森毛豆研究会」ではまだ謎の多い毛豆の歴史を探る他、より毛豆らしくおいしさのある豆を探し出すイベント「最強毛豆決定戦」なども開催しています。
「甘みが強くホクホクとした栗のような味わいのある毛豆は、全国でブランドとされる枝豆に匹敵する美味しさがあるのに全国的には知られていません。味わいをより引き出す栽培の工夫だけでなく、研究会の一員として価値を伝えていきたい」と生産者は話します。
豊かな風味を持つ毛豆は、さやから出して料理やスイーツに使ってもOK。豆の粒が大きく、実がしっかりとしているので、彩りよく存在感もあります。ゆでて食べるシンプルな毛豆を味わったあとは、ぜひ料理に使ってみてください。
青森では毛豆を漬け物にして食べる習慣があります。塩だけで漬けられた毛豆は、乳酸発酵して甘酸っぱく漬け上がります。旬の時期にゆでたての毛豆を食べられなかった家族や知人への心づくしのもてなしとしてお正月に振る舞われる、故郷の一品となります。