干し芋の生産が特に盛んな地域として知られるひたちなか市は、太平洋に面し、水はけの良い土壌がさつまいも栽培に適しているといいます。また、火山灰質の土は酸化鉄やミネラル分を多く含み、甘いさつまいもを育みます。
さらに夏の浜風、冬の冷たく乾いた海風も、天日干しの際にさつまいもを乾きやすく、かつ糖化を促す環境を作り出してきたといわれています。
「このあたりでは冬季は晴天が続き、寒暖差が大きいため、干し芋の乾燥・熟成に適しています。こうした産地の特性が、干し芋の甘さや食感、風味を安定して引き出す基盤になっています」と小池さんは話します。
干し芋は原料であるさつまいもを蒸して乾燥させた加工食品で、さつまいも本来の自然の甘みとねっとりとした食感が特徴です。保存性が高いことから昔から保存食としても親しまれてきました。「小池清嗣商店」ではこの干し芋を「平切り」「丸干し」という2種類、生産しています。
「平切り」タイプは、さつまいもを薄くスライスして干したものに対して、「丸干し」タイプはさつまいもを丸ごと一本そのまま干したもの。平切りは食べやすく、昔ながらの優しい味わいで、丸干しはねっとりとして濃厚な甘みが特徴で、スイーツのような味わいです。
干し芋づくりにおいて、同社が特にこだわるのが丸干しの製造工程における「二度むき」です。蒸かしたさつまいもの皮を一度剥き、冷却した後に再び剥くことで、皮まわりの黒ずみや雑味を抑え、仕上がりの色と味を整えています。
平切りも丸干しも、皮を剥いた芋は甘みを増すために一度乾燥機に入れ、その後、一日天日干しすることでより甘みが増します。
「小池清嗣商店」では自社の干し芋のみならず、地元の名産としての干し芋のPR活動にも余念がありません。代表の小池勝利さんは、一般社団法人「ほしいも学校」の理事長を務め、干し芋の歴史や文化を次世代に伝える活動を行っています。
4年に1度の「世界ほしいも大会」、2年ごとの「ほしいも祭り」の設立をはじめ、「ほしいも神社」のプロデュースといったユニークな取り組みまで。干し芋を単なる食品ではなく、地域文化として根づかせていくことを目指しています。