「全国のみかんを食べ比べてみて、やっぱりここのみかんが一番美味しかったんです」そう話すのは、浜松市でみかん栽培に勤しむえなみ農園の江南ご夫妻です。元々は大手自動車メーカーの管理職を務めていたという旦那さんでしたが、夫婦そろってみかん好きが高じて農家への転身を決意。たどり着いた先が、奥さんの実家近くの浜松市でした。
中途半端な気持ちで農業はできないと、退路を断つために購入したみかん畑は、4.5ヘクタールにも及ぶ山の中腹。日当たりが良く、水はけの良い赤土の土壌で、そこで江南夫妻は除草剤を使わず、施肥や摘果を工夫しながら、2人でみかんを栽培しています。しかし、就農当初は販路も少なく、みかんが余ってしまうこともしばしば。
そこで作ってみたのが、みかんジャムでした。はじめはみかんを購入してくれたお客さんへの“おまけ”として付けていたところ、良くも悪くも様々な意見をもらうようになり、段々と本格的にのめり込んでいくことに。そして、柑橘の皮を加えたマーマレードも手掛けるようになり、それが徐々に評判を呼ぶようになっていったのです。
ジャムやマーマレードは、固めるためにペクチンという添加物を加えるのが一般的ですが、えなみ農園では柑橘が持つペクチンを最大限に引き出しながら、加えるのは砂糖のみ。それも糖度50~52度という低糖の部類で、柑橘の香りや酸の効いたマーマレードやジャムを生み出していきました。
これがイギリスで開催されるダルメインマーマレードアワードの職人部門において、4年連続金賞、2020年3月には最高金賞も受賞しました。マーマレード発祥の地で評価されるまでに至ったのです。今ではその加工技術を生かし、静岡県内で栽培される様々な柑橘をジャムやマーマレードに加工。静岡県産品のPRにも一役買っています。
「はじめは自分たちで作った素材を自分たちで加工する6次産業化にこだわっていましたが、一口に柑橘といっても種類によって栽培法は様々。餅は餅屋に任せて、うちはみかんとマーマレード・ジャム技術を生かしていけば良いと思うようになったんです」そう話すように、今では奥さんがみかんを、旦那さんがマーマレード・ジャムを極めるべく、追及していっています。