暮らしのQ&A
専門家に聞く、見逃しやすい熱中症の初期サインと対策

2026/08/07
取材・文/オカモトノブコ
「ユークロニア株式会社」代表。国立病院機構にて高次脳機能障がいや神経難病のリハビリテーションに従事。現在は、東京の「ベスリクリニック」で薬に頼らない睡眠外来を担当する傍ら、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行い、メディア監修も多数。主な著書に『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)、『すぐやる!行動力を高める科学的な方法』(文響社)、『多忙感』(サンマーク出版)など。
実はじわじわと表れる、熱中症の初期サイン
熱中症というと、急激なめまいや吐き気などに襲われるイメージが強いかもしれません。
けれど「疲れが抜けずに体が重だるい、頭がボーッとして考えがまとまらない、といった軽い不調から熱中症が始まるケースも実は多数。睡眠不足や疲労感がたまって自覚のないまま発症することがあるのも、熱中症のやっかいなところです」と話す菅原さん。
「熱中症になりやすい環境も、実は高温の屋外だけに限りません。注意したいのは、湿度が高く、空気が流れない場所。
室内でまず多いのは、電気代を気にしてエアコンの使用をガマンするケースです。冷房がないトイレや洗面所、キッチンなど室内で作業に没頭したり、停車中の車内でスマホに夢中になったりすると、体の変化に気付かないことが多くあります。

“夏バテ気味だし、ちょっと調子が悪いな”と感じたら、それは体からのサインかも。最近の気候からは、誰しも熱中症のリスクを抱えやすい環境にあると言えます。“予防”という観点からも、ぜひ熱中症対策の重要性について意識できると良いですね」
体温の上昇を防ぐ、応急処置と予防対策の違い
熱中症対策として広く知られるのが、体調が急変したときに、首の後ろや脇の下などを急速に冷やす局所冷却。「そのほか他人への応急処置としては、保冷剤を手に握らせたり、足裏に当てたりして熱を逃がすのが手軽にできる方法です」と、菅原さん。
「ただし、これはあくまで緊急時がメインの対策。これに対し、普段からの熱中症対策として最近、注目されているのが“事前に体を冷やす”方法です。
ポイントとなるのが、全身を巡る静脈の血液を緩やかに冷やすこと。ミストの水滴をふんわり吹き付けて全身に風を通すと、気化熱とともに体温の急上昇を抑えてくれます。

メントールなどのアロマは、それ自体に体温を下げる作用はありませんが、香りや感覚などで心地良い清涼感を得ることも、暑い夏を快適に過ごすための大切な工夫のひとつです。
また、最近はハンディファンを使う人も増えましたが、風を当てるのは顔だけでなく、体にも風を送るような使い方ができればベター。
服を選ぶときも、締め付けが少なく、空気の通り道ができるものを。最近では、汗を素早く吸い取る綿やリネンで涼を感じる肌当たりの素材もあり、ベタベタした汗が気になる人は、汗を吸収する機能性インナーを利用するのもひとつの方法です」

適切な汗ケアと水分補給で、熱中症につながる夏の不調を防ぐ
ただし逆に注意したいのは、汗をかいて湿った肌にクーラーの冷風が当たり、頭痛などの不調を引き起こしてしまうケース。
「冷房の効いた室内に入る前に汗は吸水性の良いタオルでこまめに拭き取ったり、首筋を冷やさないスカーフや、露出した肌を守る薄手のはおりものなどを準備しておくのがおすすめです。
熱中症予防の観点からは水分補給も大切ですが、冷たいものを一気にがぶ飲みするのも、夏の不調を招く要因のひとつ。また、特に体が暑熱順化されていない人ほど、汗でナトリウムを失いやすいことが分かっています。
塩分や、ミネラルを含んだ麦茶などの飲み物を少しずつ・こまめに飲むことが、水分補給のポイントだと覚えておきましょう。

熱中症対策といっても、禁止事項ばかりだと疲れてしまうもの。清涼感や風の通りを感じるグッズや香り、着心地の良い服なども上手に活用して、この夏を楽しく、健やかに乗り切っていきたいですね」
← 前の記事へ
← 前の記事へ




