暮らしのQ&A
来年も気持ちよく着るために。“洗濯王子”に教わる夏服をしまう前の洗濯のコツ

2026/10/03
(取材・文/オカモトノブコ)
洗濯家。長野県伊那市のクリーニング会社「芳洗舎」3代目。洗濯という側面からより良い暮らし方を提案し、“洗濯王子”の愛称で、テレビや雑誌など数多くのメディアで活躍。災害時の洗濯支援チーム「DSAT」代表や一般社団法人 日本衣生活支援機構の代表理事として、衣生活における社会課題の解決にも取り組む。
衣替えの前に知っておきたい「黄ばみ・黒ずみ」の原因
「まず夏服の黄ばみやにおいの原因の多くは、実は保管方法というよりも、普段の洗濯で汚れが落ちきっていないことにあります」と中村さん。
「実はいまの家庭用洗濯機は“時短”や“節水”を優先するあまり、洗う時間や水量、すすぐ回数が足りていないケースがほとんど。その結果、汚れが繊維に残ったままになったり、水に溶け出した汚れが再び服に戻ってしまう“逆汚染”が起きたりします。
落としきれなかった皮脂やタンパク汚れは、繊維に残ると黒ずみの原因になったり、また時間の経過とともに少しずつ酸化して、白い服が黄ばんだり、変色する原因にもなります」
服のにおいも、干し方の問題でなく「汚れ残り」が元凶
さらに「実はにおいの正体も、洗濯で落としきれなかった汚れが原因。干し方による問題ではありません」と、中村さんは話します。

「洗いやすすぎの工程で汚れが完璧に落ちていれば、部屋干しでも生乾き臭がすることはまずありません。におうということは、単純に洗い方が足りず、汚れが残っている証拠。
ただし、汗や皮脂をたっぷり吸った服を湿ったまま放置するとカビの原因になるのでNGです。洗うまでの間はハンガーやカゴなどにかけて乾燥させておきましょう」
洗濯槽に汚れがたまり、洗い残しにつながる悪循環に
さらに服の汚れが落ちきらない洗濯方法は、洗濯機そのものが汚れる原因に。
「衣類に汚れが残るような洗い方を続けていると、洗濯槽の裏側にも汚れが蓄積します。すると次に洗濯するタイミングでは洗剤が洗濯槽の汚れにもくっついてしまい、衣類の洗浄効果がさらに落ちる悪循環に。
そのため“衣替えのタイミングだから”と気張る前に、まずは日頃の洗濯方法を見直すことが夏物をきれいに保ついちばんの近道なんですよ」
そこで次からは、中村さんがすすめる基本の洗濯プロセスを教えてもらいました。
まず見直すべきは「いつもの洗濯」から
汚れを繊維の奥からしっかり落とすために、まず見直したいのが洗濯時間。
「汚れをきちんと落とす洗いの時間の目安は“15分”。しっかりと汚れを落とすのに最低でも10分は必要で、そこから20分くらいまでは汚れ落ちの効果は高まります。
逆に5分程度の時短モードでは、汚れが十分に落ちる前に次の工程に進んでしまい、そのまま残りやすくなります。
洗いの時間を適切にすれば、ほとんどの場合、部分洗いやつけ置きといった手間は不要になりますよ」
水は多めに、洗濯物は適正な量をキープ
「洗濯物の汚れをしっかり落とすには、時間だけでなく衣類と水と洗剤の3つの量もポイント。今はほとんどの洗濯機で節水が標準になっていて、キレイに洗いにくい水量になっていると感じます。そのため自動の水量よりも増やす必要があります。
また洗剤も、“目に見える汚れがないから”と減らさず、実際の水量に合わせた規定の量をきちんと入れましょう」
汚れをしっかり落とすには、いちどにたくさんの洗濯物を入れすぎないのもポイントに。

●縦型洗濯機の場合
「縦型洗濯機の場合、洗濯槽の“6~7割まで”が基本。その場合も水量はいちばん多めに設定します。たっぷりの水の中で、洗濯物がのびのびと動くスペースを確保することが、汚れをしっかり落とすポイントに」
●ドラム式洗濯機の場合
「もともと水量が少なく、洗濯物を上から落とす“叩き洗い”で汚れを落とすドラム式の場合、“半分”までを目安に洗濯槽のスペースに余裕をもたせることが大切。
ドラム式できれいに洗えないというお悩みの多くも、洗濯物の量を見直すことで改善します」

汚れを残さない基本ルールは「すすぎ3回」
「衣類の黄ばみやにおいが発生する、もうひとつ大きな原因が“すすぎ不足”です」と中村さん。そこで覚えておきたい、すすぎの正解とは?
●縦型洗濯機の場合
「最近の洗濯機で主流の“すすぎ1回”や、すすぎ不要の洗剤などを使う設定では、繊維にどうしても汚れが残りがち。
けれどすすぎの本来の役割は、衣類から出た汚れを水で薄め、希釈して流し去ること。そのために“すすぎは3回”が基本と覚えておきましょう」
●ドラム式洗濯機の場合
「ドラム式の洗濯機は節水設計が多く、標準的なすすぎの水量では汚れが残る可能性が。
そこで“すすぎ3回”にプラスしたいのが、“注水すすぎ”の設定。水を注ぎながらすすぐことで汚れをしっかり洗い流し、繊維に汚れが戻るのも防ぎます」
柔軟剤を使うなら、適量を適切なタイミングで
なんとなく無意識に柔軟剤を使っている人は、次のポイントを見直してみて。
「本来、柔軟剤はウールのニットなどを洗った時に繊維のゴワつきや静電気を防ぐためなどに使われます。すすぎで流す洗剤とは違い、洗濯の最後に使って衣類に残すものなので、日常的に使うと衣類や洗濯槽に蓄積して、洗浄効果を落とす原因にもなります。
タオルや肌着などは柔軟剤を使うと汗や水分を吸いにくくなるので、必要なもののみ使い、適量を使うように心がけましょう」
日々の洗濯をラクにする、仕分け洗いのすすめ
「とはいえ“正しい洗濯は難しそう”と考えなくても大丈夫。色や素材ごとに仕分けをして、一定量の洗濯物がたまったタイミングで洗濯すればOKです。

例えば、白物のTシャツや清潔さが重要な下着などは、“洗い15分・すすぎ3回・脱水3分”で汚れをしっかり落とし切るコースに。
黒や濃い色の服は“洗い10分・すすぎ2回・脱水3分”を目安に洗い、摩擦を減らし、白っぽく色あせるのを防ぐようにするといいでしょう」
すでに黄ばんでしまったら? 正しい洗濯とつけおき洗いのコツ
それでは、すでに黄ばんでしまった服をきれいにする方法は?

「これまで落ちなかった頑固な黄ばみも、まずは先ほどご紹介した“洗い15分・すすぎ3回・水量多め”の基本設定で洗ってみて。
1回洗って“少し黄ばみが薄くなったな”と感じたら、その洗い方がしっかり効いているサイン。実は1回の洗濯で落とせる汚れの量には限りがあるため、2回、3回と繰り返してみてください。クリーニング店でも、落ちにくい汚れは繰り返し洗って落とすケースが多くあります」
頑固な汚れに。「酸素系漂白剤」使いこなしのポイント
それでも落ちない汚れに、頼りになるのが「酸素系漂白剤」としても知られる『過炭酸ナトリウム』。「洗濯でも落ちない、酸化して黄色くなった皮脂や色素などを分解するのに効果的です」と中村さん。

「規定量の漂白剤を溶かし、30分~長くても2時間ほどつけ置きします。普段使いの洗濯用洗剤を一緒に溶かしてもOKです。40度くらいのお湯を使うと効果が高まります。
ただし2時間を超えると化学反応が終わり、それ以上長く浸けてもほとんど意味がありません。再度、漂白液を作り、改めて漂白をする必要があります。また漂白剤が使えない素材や服の作りもあるため、使う場合には注意をしましょう」
お気に入りの服を長くきれいに保つ、収納の正解
最後に聞いたのは、洗い上がった夏服を来年まできれいに保管する収納のポイントについて。
カビやにおい対策は「汚れ落とし」と「除湿」が基本
「引き出しやクローゼットにしまっていた衣類にカビが発生するのも、“取りきれなかった汚れ”が原因。残った皮脂やタンパク汚れがエサとなり、湿度が高い密閉された空間でカビが繁殖してしまいます。
これを防ぐには、まず衣替えの前にしっかりと汚れを落としきる“しまい洗い”の徹底を。
そして、収納ケースや引き出しをきれいに拭いてホコリや湿気を取り除き、清潔にしておくこと。さらに収納スペースに除湿剤を入れて、湿気をため込まない環境をつくることが大切です」

衣類の長期保管には「防虫剤」の常備が安心
ウールやシルクなどの動物性繊維には、防虫剤の使用がおすすめ。では、夏服の衣替えの場合は?
「虫食いは、多くの場合シルクやウールといった動物性の繊維に起こります。綿や麻、化学繊維は直接、その害を受けることはありませんが、繊維に残った食べこぼしや皮脂汚れを害虫がかじって生地に穴をあけてしまうことも。どんな素材でも、衣替えの前にやはり汚れを落としきるのが大前提です。
夏服をしまう場合も、きちんと汚れを落とすことと、ウールやシルクなど動物性の素材をしまう収納ケースや引き出しには防虫剤を入れておくことをおすすめです」
クリーニングした服を保管するときは
クリーニングした衣類にも、収納のコツはあるのでしょうか?
「“クリーニングから戻ってきた衣類のビニールカバーは、湿気がこもるから収納時には外すべき”と聞いたことがあるかもしれません。
けれど、それはクリーニングの技術やサービス、資材などが未熟だった頃の話。今のクリーニングでは、むしろ室内のほこりや空気の汚れが服につかないよう、カバーは外さずにそのまま収納した方が手間もありません」
こんな時代だからこそ考える、衣替えのタイミング
ここまで衣替えについて考えてきましたが、そのタイミングとなると、なかなか判断に迷う人が多いのでは?
「特に最近は温暖化の影響で、季節の境界がとてもあいまい。季節を問わず通年で着回す服も増えたため、“この日を境に衣替えをする”ということが難しくなってきました。

だからこそ、夏服を長くきれいに着るには“衣替えだから”と特別なケアをするより、日々の洗濯そのものを見直すことが大切。
普段から汚れをしっかり落とし切れていれば、お気に入りの服はいつ出してもにおわず、きれいな状態をキープできます。まずは気軽に、洗濯機の設定を確認することから始めてみてくださいね」
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