暮らしのQ&A
台風や線状降水帯が迫ってきたら? 防災のプロに聞く水害への対策

2026/10/03
(取材・文/オカモトノブコ)
熊本在住・無印良品マニアの防災収納インストラクター。防災士、整理収納コンサルタントとしての経験や、主婦・母としての視点を生かし、「暮らしに根ざした実践的な防災」のノウハウや考え方をセミナー・SNS・書籍などで幅広く発信。 公式サイト
まず「ハザードマップ」で自宅のリスクを知ることから
大雨や浸水による被害をできるだけ防ぐため、“どんな対策をすればいい?”“避難に必要な準備は?”など、知りたいことはさまざま。
「水害は地震と違って、事前に予測して備えをしやすいのが大きな特長です。まずは自宅を取り巻くリスクを知って準備し、状況によって落ち着いて行動することが大切です」と松永さん。
「実は過去10年間に、全国の市区町村の約97%で水害・土砂災害が発生しているというデータも(※1)。水害は“防ぐ・逃げる”だけでなく、“いつか来るもの”として、うまく付き合う心構えを持っておくことが大切です」
※1 『水害から暮らしを守る水防活動。日頃からの備えで被害を防ぐ』(政府広報オンライン)
「また災害が近づいているかどうかにかかわらず、まず確認してほしいのが自宅周辺のハザードマップ。水害の危険があるかどうか、何メートルの浸水が想定されているのかを知ることが、適切な対策を取るための第一歩です。
「避難所」か「在宅避難」か。住環境によって対策は違う
「国が推奨している“マイ・タイムライン”というものがあり、それぞれの個人が台風や大雨などの水害・災害に備えて自分に合った防災・避難計画を立てることを意味します。
自治体のホームページなどでも作成シートやツールがありますが、ポイントは自分や家族が“いつ”“何をするのか”を時系列で整理すること。
そのためには、まず住まいの環境によって“避難所”か“在宅避難”を判断することが大切。そのうえで、気象情報や警戒レベルに合わせてどう行動するかを決めておきましょう」
浸水エリアの家庭(避難所へ速やかに避難)
氾濫しやすい河川や浸水エリアはほぼ決まっています。ハザードマップで浸水想定区域に家がある場合は、警戒レベル3(高齢者等避難)やレベル4(避難指示)が発令されたら迷わず避難所へ。持ち出し用の防災リュックや、多めの着替えを準備しておきましょう。
安全な場所の家庭(在宅避難を整える)
マンションの高層階や高台など、自宅のほうが安全と考えられる場合は、外に出ず家にとどまる「在宅避難」が基本。停電対策や備蓄など、家の中の環境を整えることがメインになります。
台風・大雨が近づいたら? 「タイムライン別アクション」
「台風や大雨は、地震に比べてやってくるタイミングが予測しやすいもの。数日前から段階的に準備を進めることで、慌てずに対策を立てることができます」
そこで松永さんに、時系列に合わせた水害対策の基本をまず教わりました。
3日前(防災リュックのカスタマイズ)
一般的な防災リュックのセットを持っている場合は、より水害に特化した内容に見直しておきます。
雨に濡れることを想定して着替えを多めに入れておく、雨具や体を拭くタオルを追加するなどで、水害向けの仕様に。また、雨に濡れると急激に体温が奪われ、厳しい寒さを感じます。
たとえ夏でも防寒具は省略せず、上着、カイロ、アルミ製のエマージェンシーシートなど、暖を取れるアイテムは必ずリュックに加えておきましょう。
2〜3日前(ストックの買い足しなど)
食料やトイレットペーパーなどの消耗品をチェックし、不足があれば買い足しを。直前になると買いだめ需要で売り切れる場合もあるので、普段から備えておくことをおすすめします。
モバイルバッテリーやポータブル電源も、この段階で満充電にして準備を。
前日(家の外まわり・窓の安全対策)
台風のときは、植木鉢や自転車、物干し竿などは屋内に入れるかあらかじめ倒しておくなどで、風で飛ばされない対策を。庭木も強風で折れて近隣に被害を出さないよう、剪定を済ませておきましょう。
また側溝や排水溝が詰まると、雨水が敷地内に逆流して床下浸水の原因に。落ち葉などがたまっている場合は、掃除をして水はけを確保しておきます。
窓への対策は雨戸を閉める、段ボールを内側から貼るほか、カーテンを閉めておくことでも、割れた窓ガラスが室内へ飛散するのを最小限に食い止められます。
直前・当日(情報収集とメンタル管理)
すべての準備を終えたら、慌てず心を落ち着けて待ち受ける段階です。気象庁の「キキクル」は大雨や線状降水帯の危険度をリアルタイムで把握するのに便利。「Yahoo!ニュース」の災害情報も速報性が高くおすすめです。
自治体のLINEや緊急速報メールが確実に届くよう、スマホの通知設定もあらかじめオンにしておきましょう。
在宅避難を乗り切る備蓄と、水害時ならではの工夫
「夏から秋にかけての台風・大雨シーズンでは、気候に合わせた対策もしておくと安心です」と松永さん。
ライフラインが止まったときに在宅避難を乗り切るために、あると便利な備蓄アイテムを紹介してもらいました。
水害時の停電・気温への対策
夏の災害時に停電が起きると、エアコンが使えなくなります。熱中症対策に加え、お風呂に入れない日が続く場合もあるため、汗をかいても快適に過ごせるアイテムを準備しておきましょう。
衛生用品
大判のボディタオル、ボディシート、洗い流し不要のシャンプーなどは必需品。歯みがきシートや、非常用トイレも必ず用意しておきましょう。
暑さ・虫対策
屋内でも命に関わる熱中症のリスクが高まるため、ポータブル扇風機(ハンディファン)と、予備のバッテリーや乾電池を準備しておくと安心。熱中症対策グッズに加え、風を通すために窓を開けて寝ることを想定した虫除けグッズなどもあると重宝します。
もしもの断水に備えておく
水害時は断水だけでなく、下水の逆流でトイレの水があふれるトラブルも頻発します。給水車は毎日来てくれるとは限らず、もらえる量に制限があったり、行列に数時間並んだりすることも。
自宅での備蓄を整えておけばこうした心配も減りますが、もしスペースに余裕がなければ、携帯浄水器などを入手しておくのもひとつの方法です。
飲料水・水道水のくみ置き

保存水を買い置きするほか、できなかった場合も無理して買いに走らなくて大丈夫。空のペットボトルやウォータータンクに水道水をくみ置きしておくだけで、調理用水としては十分に使うことができます。満タンに入れるのが、水を長持ちさせるポイントです。
お風呂の水を張る(生活用水の確保)
地震のときは配管の破損による漏水リスクがあって浴槽の水張りは推奨されませんが、台風や水害の直前対策としてはとても有効な方法。
断水時のトイレを流す水や、手洗い用の生活用水として役立ちます。
ただし水が逆流する危険性のある家屋の場合は、いったんゴミ袋などに入れた水を浴槽に入れましょう。逆流防止の“水のう”としても役立ちます。
「食」の備えも事前にしておく
水害時に限りませんが、家庭での備蓄は最低3日分×家族の人数、最近では大規模な災害に備えて7日間分を確保することが推奨されています。
支援物資が届くまで、自力で安心して過ごせるように備えをしておきましょう。台風は事前に予測がつくので、事前に準備しておくことが可能です。
カセットコンロとガスボンベ

カップ麺やレトルト食品などがあっても、火が使えなければ調理できません。カセットコンロの耐用年数は約10年、ガスボンベの使用期限は約7年が目安。
いざというときに使えない……とならないよう、ガスボンベは普段から鍋料理やガスストーブなどに使いながら、ローリングストックしておきましょう。
事前にごはんをつくっておく
台風が来ることが分かっていれば、停電や断水が起きる前に食事をまとめて用意するのがおすすめ。松永さんのお宅では、ご飯をたくさん炊いておにぎりや、具だくさんの豚汁をつくって鍋ごと備えているのだそう。
外出先でのゲリラ豪雨に「防災ポーチ」のすすめ
局地的なゲリラ豪雨や線状降水帯は、通勤やお出かけの途中で突然遭遇するケースも少なくありません。
「電車の立ち往生などに巻き込まれた際、特に困るのが“トイレ”と“のどの乾き”や“空腹”。普段のバッグに最小限のアイテムをまとめた、防災ポーチをしのばせておくと安心感が違います。また、必ず飲み物を1本は携帯するように習慣づけましょう」
最後に松永さんがおすすめの、防災ポーチのつくり方を教えてもらいました。
防災ポーチの中身

携帯トイレ(コンパクトなもの1〜2回分)、ウェットティッシュ、手軽な食料(『備蓄おやつ チョコようかん』など、溶けにくく片手で食べられて腹持ちの良いもの)、防災ホイッスル、エマージェンシーシート、マスク、救急絆創膏や常備薬、現金、緊急連絡先・避難メモ・筆記用具。
ポーチ容器の使い分け

松永さんは中身がひと目で把握できるメッシュポーチを愛用中。中身の水濡れを防ぐなら、ウォーターボトルを使った「防災ボトル」に詰める方法もあります。容器自体を水筒や給水用ボトルに使うことができるのも、いざというときに便利で安心です。
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