(閉)イデー東京
【IDÉE TOKYO】第5話 レザーブランドsonorのこれから
2021/05/07
環境と人にやさしい革でバッグやサコッシュ、スリッパなどを制作されているレザーブランドsonor。このsonorのpop upを4月29日(木)からIDÉE TOKYOにて開催しています。
ひととの繋がりを大切にされているsonorさんにこれまでと今、そしてこれから先についてお話しを伺いました。
最終回の今日はsonorのこれからについてお伺いします。
●これまでのお話
◎第1話 sonorのこれまで
◎第2話 sonorのこれまで
◎第3話 sonorのこれまで
◎第4話 sonorのいま
instagram @sonorsonorsonor
(明子さんが制作でお使いになっているミシンには、かわいらしいロバと家のシールが貼られていた。「ここに合わせるとちょうどいい、という目印にしているんです」)
―sonorの商品には素材へのこだわり、やさしさを感じます。布と革の両方を使うところはじまり、革のみを使われるようになった現在で、ブランドへ込める想いは変わってきたんでしょうか?
(明子さん)
布を使っていた頃も革だけを使うようになった今も、国産の素材を使うこと、使う人が心地よく思ってくれるものを作るということは変わらないですね。子育てをし始めてから安全なもの、日本でつくられたものに意識が向くようになったので、自然とものづくりをするときでも意識するようになったんだと思います。
山口産業さんの革は、たくさんの革がある中でもやさしい発色や質感に惹きつけられました。工場見学へ行ったときに環境への配慮をされていて、ミモザから採れるタンニンでなめしを施しているというお話がとても印象的でした。こういう背景があったからこそ魅力的に感じていたということに気づき、よりこの豚革を使いたいと思うようになりました。
―タンニンなめしとクロムなめしをされた革では、染めた時に色の出方も変わってくるんですか?
(明子さん)
変わりますね。クロムなめしは経年変化が見られにくいですが、タンニンなめしだとどうしても経年で色が変化していくので、そうというところが大きな違いだと思います。
クロムなめしは染めても個体差がなく、経年変化による色の変化が少ないので製品化しやすく、大量生産向きで、売る側としても扱いやすいのではないかと思います。
タンニンなめしだと経年変化するとか、ロットによっては色が違ったりなど、難しい素材だなと感じることが多々あります。傷は目立つのですが、優しい表情を生かして、あえて色々と加工はせずに使いたいと思っています。
山口産業さんは独自の技術“ラセッテーなめし”を開発されたんです。質感的に硬くなりやすい一般的なタンニンなめしに比べて、山口産業さんのところはしなやかさがある。
山口産業さんも昔はクロムなめしもされていたんですけど、私が知り合った10年前でもほぼ100%タンニンなめしをされていて、環境配慮への意識がすでに高かったんです。今では害獣駆除の革が全国的に出ていますが、各地でマタギの方が駆除した鹿やイノシシの皮を山口産業さんがなめして、また地域へ戻すという活動を、もう8年ぐらいされているんです。
山口産業さんは積極的に活動をされていて、そういうところに私たちも共感しています。
国内でまかなえる素材って貴重だと思います。食肉の副産物を国内でなめして、それが国内で使われて…ということが進んでいけば、衰退する国内産業に少しでも歯止めがかかるんじゃないか。いや、そうなってほしい。という思いもあって続けています。
豚革といえば毛穴が特徴的ですが、毛穴のおかげで革の中では通気性も良く、パラパラ雨に濡れてもすぐに乾きますし、革に含まれる油分が少ないことで軽いところも豚革の良いところです。
―sonorのバックパックの軽さに驚きました。牛革だったらずしっとした重さがありそうだけど、革自体が軽いんですね。手に持った感じもやわらかくさらっとしていて、背負っても革の重みを感じないバックパックだなと思いました。

(啓太さん)
そうですね、革自体が軽いですね。そういった意味では使い勝手がいいんじゃないかな。
(明子さん)
せっかくある国産の素材。リスクは色々あるけれど、もっとうまく活用できれば先にもつながるのかなという思いで、豚革の可能性をいろいろ探りながら新しいものを作っていけたらなと思っています。
(啓太さん)
まだまだやれることはあるかなと思いますね。最近SDGsで持続可能な素材のことが言われていますけど、豚革だって持続可能な素材だと思います。
―大変なこともたくさんあったようですが、やめたいと思ったり他の方向に進みたいと思ったりしことはなかったんですか?革以外の素材に挑戦してみようとか?
(明子さん)
ないですね。10年程、この豚革を使っていて、素材の魅力をすごく感じているのでもっと多くの方に知って、使って頂きたいです。今でもそういう気持ちでいます。
―1つのことをやり続けていると、やりきったなと思って全く違うことに転換される人もいらっしゃいますけど、やっぱり革だなと思われたんでしょうか。
(明子さん)
おそらくまだ豚革に可能性があると思うので、やりきったとは思っていないです。
やりきったと思えることが、今の目標なのかもしれません。
―またいろいろな人との出会いがあって広がっていくのかなとお話しを聴いていて想像しました。
(明子さん)
そうですね(笑)似通った感覚の方とお仕事させていただくことが多いですが、全くそうでない方から依頼を受けて豚革で商品を作ることもあります。意外とそういうところから今までsonorではやってこなかった新しい発想が生まれることがあります。それもおもしろいと思うし、いろんな人がいる限りもっと多くのアイディアが出てきて、また良いものが生まれるんじゃないかなと思います。
―ひとりだけでやっていたら煮詰まってやめようって思うことはあるでしょうけど、人と人とのお付き合いがある分、永遠に広がりがあるような気がしますね。
(明子さん)
永遠かはわからないですけど(笑)まだまだ可能性は探っていきたいですね。
(啓太さん)
豚革に限らず違った素材もあって、先程お話ししたマタギさんの話。山口産業さんの紹介で直接取引をしているマタギさんがいます。それがIDÉE TOKYOで取り扱いのある鹿革です。それこそ害獣駆除のエゾ鹿で。マタギさんが獲られた鹿の皮を山口産業さんのところに送ってなめしてもらって、それをsonorが購入しているんです。マタギさん一人なのでそんなに頭数が獲れない現実もあります。

(IDÉE TOKYO限定の鹿革でつくられたPASSCASE_M)
-1人のマタギさんから受け取るのには限界がありそうですね。
(明子さん)
実際は害獣駆除による鹿革は全国的に作られていますが、どうしてもコストがかかってしまって、流通させるのが難しい状況ではないかと思います。その辺をもっとうまく活用して循環させていきたいと考えています。
―革屋さんに行くと鹿革を売っているのを見るので、鹿革は商品として出回っているイメージがありました。マタギさんが害獣駆除として獲ってなめされたものをsonorで使うことになったのは、広まってるからかと思っていたのですが、そういうわけではなかったんですね。
(明子さん)
そうですね。市場で流通している鹿革には、獣害駆除の革はまだ少ないと思います。
駆除鹿革の活用については、また新しい視点で発信してみようと現在計画中です!
―現在使われているピッグスキン、牛革、鹿革以外の革も今後使っていくんでしょうか?
(明子さん)
そうですね。国産のラセッテー技術でなめされたモンゴルの羊革も使ってみたいと思っています。
<おわり>
たまたま出会った山口産業さんのピッグスキン。
そこには環境配慮やタンニンなめしの推進など園田さんが惹き付けられる背景も隠れていました。
衰退していく国内産業や持続可能な素材へ少しでも力になればという想いが、sonorのものづくりにも詰まっています。新たな質感や素材から生まれるこれからのsonorも楽しみです。
あっという間に時間は過ぎていき、愉しいお話で胸の高鳴りを感じながらアトリエをあとにしました。
sonor pop upは5月24日(月)まで開催しております。
お品物は店頭だけでなく、商品代+配送料500円で通信販売でもご購入いただけます。
お店までお電話いただくか、IDÉE TOKYOのinstagramアカウントまでお気軽にお問い合わせください。
*sonorの商品は以下からご覧いただけます
○CORONシリーズ
○革のリュックとトートバッグ
○革のサコッシュとパスケース
○革のスリッパとティッシュケース
instagram
@ideetokyo
IDÉE TOKYO