誰かのためはみんなのため
“一番のお気に入り”を目指して。「心地良い」を追求したこどものための服づくり

2026/05/25
(取材と文・オカモトノブコ イラスト・村松佑樹)
糸から開発して織り上げ、肌触りも機能性も妥協しない
こどもの肌は、大人よりも刺激に弱くデリケート。激しく動き回ったり、汗をたくさんかくことも多いこどもにとって“本当に着心地の良い服”をつくるには、大人の服とはまた違った視点の工夫が必要とされます。
「無印良品 では2025年から『こどもためのこども服』というテーマに立ち返り、素材から縫製、デザインやボタンなどのパーツに至るまで、“こどもにとっての心地よさ”を第一に考えた商品開発を行っています」こう話すのは、無印良品 の衣服・雑貨部でこども服の開発を担当している窪さんと潮田さん。
そのベースになっているのが、自然素材の使用と、肌当たりの良さの追求です。
「オーガニックコットン100%の商品をはじめ、自然素材の使用を増やすとともに、肌当たりの良いやわらかさを実現するため、糸の撚り方の強さから、縦糸と横糸の本数調整といった布の織り方まで、細かい部分まで何度も試行錯誤を重ね、納得のいく肌触りの生地をつくっています。
保護者視点では、硬い生地の方が洗濯耐久性は高いですし、化学繊維の方が型崩れしづらく、乾きやすいなどのメリットもあるのですが、私たちが目指すのは『こどもにとって一番のお気に入りになる服』。
だからこそ、やわらかな肌触りを保ちながら、機能・強度を両立するものを、デザイナーやパタンナー、生産部門のスタッフと多様な視点を持ち寄り、知恵を出し合うことで実現しています」

特に気を配っているのが、肌に直接触れる縫い目。
「撚りの強いツルッとした一般的なポリエステル糸と違い、甘撚りでふんわりやわらかな『ウーリー糸』という糸を使用したり、糸を叩いてフラットにすることで、ザラつくような感触をおさえるなど縫製の仕様を工夫しています」

すべてのデザインに意味がある。日常着として手にとってほしいから
こどもがストレスなく着られる服を追求するというものづくりの姿勢は大切にしつつ、譲れないポイントのひとつが“日常着”として取り入れやすい価格帯を維持すること。
「無印良品のこども服は、華美な装飾は省き、その分、着心地の良さや必要な機能を叶える素材やデザインにコストを割くことで、手に取りやすい価格を実現しています。
『かわいい』と言っていただけるデザインも、見た目のためだけではなく、そのかたちには必ず何かしらの意味があるんです」
例えば、『キッズ 楊柳ガーゼスリーブレスワンピース』。

「脇の下にゴムが入ったデザインは、単にギャザーを寄せるためではなく、フィットして中の肌着が見えないようにするため。首の後ろもギャザーが寄って後ろ姿がかわいく見えるんですが、ゴムの伸縮性でスルっと脱ぎ着しやすいようにするためにこういった仕様を選んでいます」と商品を担当した窪さん。

また、何気ないボタンのデザインも、こども視点での使いやすさを叶えるための工夫が。
「スナップボタンは軽い力で留め外しができる“甘口”のタイプを使用したり、こどもの手でも掴みやすいよう、指に引っかかりやすい裏がギザギザしたボタンをオリジナルで開発したり、裏がすり鉢状にカーブしたボタンを採用しています」

活発に動くこどもの服は、動きやすさも必要不可欠な要素。
「リピートしていただける方が多い『レギンスパンツ』シリーズをはじめ、シルエットがタイトなパンツは伸縮性のある素材、伸縮性がそれほど高くない素材を使う場合は、シルエットにゆとりをもたせることで動きを妨げないようにしています」

「また、2025年の冬物のアウターでは袖の生地の切り替えが首から脇に斜めに入ることで腕を動かしやすい『ラグランスリーブ』を一部の商品で採用。ランドセルの肩紐が縫い目と重ならないことで肌当たりのやさしさも同時に叶えました。
ほかにも、袖の下から脇までひと続きの長いマチをいれることで腕を動かしやすいようにするなど、選ぶ素材やデザイン、すべてがこどもにとっての心地よさへとつながるように考えています」(潮田さん)
そんな商品開発のプロセスの最終段階で欠かせないのが、実際に着心地を確認してもらうモニタリング調査。
「洗濯を何度か繰り返しながら、モニターのこどもたちに実際にサンプルを着て過ごしてもらったあと、こどもと保護者にアンケートに答えてもらい、集まったリアルな意見を参考に、脱ぎ着や動きがスムーズにできるよう、改良を加えて最終的なデザインへと落とし込んでいます」
例えば、マチがあるポケットの内側にループが付いていて、GPSやカギなどを身につけられる『キッズ 見守りポケット付きクルーネック半袖Tシャツ』は、8か所にループをつけたサンプルを用意。

どの位置が一番つけやすいか、実際にこどもたちから意見を集め、その結果を踏まえて、重みがあるGPSもおさまりやすい位置を考慮しつつ、ループの位置を決定しました。

“ひとりでできる”をサポートするベビー服
一方、無印良品 のベビー服については、もうひとつの大きなテーマが。
「80~100サイズの服を着る年代のこどもは、お着替えを練習したり、自律して生活できるようになる成長段階にあります。そこで 無印良品 のベビー服は、“服育”をテーマに、服に関わる育みをサポート。“ひとりでできる”を応援するアイテムを展開しています」
その代表的なものが、首まわりの生地に高い伸縮性を持たせることで、肩のスナップボタンをなくし、こどもが一人でも“するっと”簡単に着替えができる『あたまするっと』シリーズ。
オーガニックコットン100%の素材の心地良さもあり、「肌触りも着心地も良さそう」「何回着ても首回りが全然よれません」「頭が大きめのこどもでも、すぽんと入って首元も伸びずに形がきれいなまま」と、たくさんの支持を集める人気の定番アイテムに。

ほかにも、ストレッチ性のある素材で、こどもが一人でも簡単に脱ぎはきしやすい『おなかすっぽり』シリーズも、はき心地の良さでリピーターが多い商品の一つです。

生まれてからずっと、人生に寄り添い続けられる服をつくりたい
キッズ(110-150cm)、ベビー(80-100cm)に加えて、隠れた人気商品が新生児のアイテム。
例えば、『脇に縫い目のないカバーオール』のシリーズは、一枚布で仕立てることで、赤ちゃんの肌に縫い目が当たらないと人気を集め、「肌触りがとても良く、抱っこしていても気持ちいい」「オーガニックコットン100%で通気性がよく、お手ごろ価格なのも非の打ち所がない」といった数々のコメントが。

こうした反応に対して、「新生児ラインに限らず、無印良品のこども服は、一度身につけると着心地の良さが伝わって、“こればかり着ています”とリピートいただく方が多いのは本当にうれしいこと」と窪さんと潮田さん。
「新生児、ベビー服が入り口となって、そこからキッズ、大人と成長していっても、人生にずっと無印良品の衣服が暮らしの中にある……。そんな姿を思い描きつつ、これからも“本当に着心地良い服”について日々、考え続け、かたちにしていきたいと思います」
← 前の記事へ
← 前の記事へ






