部屋は私でできている
「ステンレスユニットシェルフは収納を超えた、生活を組み立てるシステム」 二人+二匹のロンドン暮らし

2026/07/29
今回は2022年に香港からロンドンに移住し、築100年の賃貸住宅で暮らすカップルを取材。ともに1990年代前半生まれ、猫好きの二人の生活の中心には『ステンレスユニットシェルフ』がありました。
(取材と文・矢吹紘子 撮影・Mike Pang & Charlia Lee)
ブランドデザイナー。大手文化機関やミュージアムなどのクライアントと協働し、デジタル体験を通したブランディングを担当。
Charlia Lee(チャーリア・リー)
ジュエリーメーカー。香港の広告会社でプロダクトマネージャーとしてマーケティングを担当。渡英後はジュエリー作りに専念。
Instagram:@11blab
日々の積み重ねが、スタイルになる
パンデミック真っ只中の2022年、生まれ故郷の香港から英国に引っ越ししたマイクとチャーリア。マイクは博物館などの文化機関をクライアントに抱えるデジタルブランディングのプロ。一方のチャーリアは広告業界でのマーケティング担当を経て、現在はジュエリーデザイナーを志しながら経験を積んでいる。

4歳のトラネコ・ケイキーと、1歳のパフィー。二匹の猫たちと共に暮らす西ロンドンの賃貸フラットは、二人が大切にする「Everyday life」(ささやかな日々のくらし)の要素が詰まった場所。20世紀初頭のエドワーディアン洋式の建物で、広さは60平米ほど。天井高のある開放的なリビング兼ダイニングルームには、台形に張り出した出窓から自然光が燦々と降り注ぐ。

二人はここに香港時代から使っている家具や愛用品を持ち込みつつ、新しい住まいを築き上げてきた。そのプロセスは、自分たちが求める理想の暮らしについてあらためて考える、いいきっかけになったという。

「実は、引っ越した当初はちょっと広すぎる印象も受けました。まるで空っぽの箱のようで、“型”がなくて。というのも香港では住居空間がコンパクトなので、家具の配置などのバリエーションがある程度フォーマット化されているんですよ。その中で工夫しながら効率よく暮らす道を探すのがセオリーだったんです。
でもここでは、その方程式が通用しない。その結果、自然と実用性より雰囲気に目を向けるようになりました。太陽の光の移ろい方の変化や、ものがどんな風に空間に収まるか。そしてそれぞれのスポットが僕たちのルーティンに、どう寄り添うか。ゆっくりと試行錯誤している最中です」(マイク)

家具選びの目線は「ライフスタイルにフィットするかどうか」。特定のブランドやスタイルを追い求めるのではなく、ロンドン各地で開かれる蚤の市『Vintage Furniture Flea』や、地元のカーブーツセールをよく覗いているそう。無印良品のプロダクトは香港時代からのファンで、ロンドンでは大型店舗でありながら駅近で便利なトテナムコートロード店が行きつけだ。
「レイアウトのコツ? 『場の“声”を聞く』とでもいうのでしょうか。例えばリビングは、食事をしたりコーヒーを淹れたり、ときに仕事をこなしたりと、私たちが最も活動的に動く場所。その分変化が求められるので、作業の動線に合わせ、季節替わり以上のペースで配置を変えています」(チャーリア)



ステンレスユニットシェルフは自分たちを写す鏡

マイクとチャーリアの暮らし語る上で欠かせないのが、『ステンレスユニットシェルフ』の存在だ。初めて目にしたのは香港。ロンドン移住を経て、2024年の春に英国の『MUJI』のネットストアで最初の1台を購入した。
「決め手はユニットごとに高さや幅を変えられる柔軟性と価格の手頃さ、そして素材とのバランスですね。チーク材など木製の家具が多い我が家にステンレススチールが加わることで、コントラストが生まれる。空間全体が完成されすぎた印象になるのを防いでくれます」(マイク)
現在はリビングのメインとなる北面の壁全体に沿い、3台のシェルフを横並びにセット。それらは収納という枠組みを超え、ディスプレイ、コーヒースタンド、小さなアートギャラリー、さらにはキャットタワーまで、いくつもの役割を担う。
「『ステンレスユニットシェルフ』は単なる収納ではなく、暮らしを組み立てる“システム”のような存在。同時に日頃の習慣や、趣味・趣向を映し出す鏡でもあります。朝はここでコーヒーを淹れ、日中は日用品を取り出すために何度も往復したり。これなしでは僕らの生活は成り立たないってくらいの存在です」(マイク)
「当初は86センチ幅のものを2台買ったのですが、もう1台増やした方が壁面全体を棚で覆うことができてバランスがいいかなと。真ん中を低めにしたらコーヒーを淹れるのにぴったりな高さだと気が付いて、結果的にちょっとした軽食のコーナーにもなっています」(チャーリア)
デザインも年代もさまざまなスタンドライト、LEGOのアストン・マーティン。そこかしこに散りばめられたオブジェや日用品は、取り止めがないようでいて、妙にしっくりくる。大切にしているのは、一つひとつのものにまつわる記憶や、収まり方のバランス。特定のスタイルにこだわらず、全体の統一感を見ながら配置するのがルールだ。
折りたたみ自転車を収納できるよう棚板の高さを調整したり、そのときどきの必要に応じて微調整を繰り返しているという二人。ちなみに建物の構造を変える大掛かりなDIYは歓迎されないという、賃貸特有の住宅事情はイギリスでも共通なよう。専用パーツで繋げたり、天井から突っ張ったりとフレキシブルに形を変えることができる『ステンレスユニットシェルフ』は、その面でも頼れる味方だと太鼓判を押す。







「見せる」「隠す」のメリハリで機能的に収納


収納に関しては、見た目を整えることよりも、日々の動線に基づいて考えるのがポリシー。起きてから手にとる衣類、出かける前に使う化粧品といった具合に、時系列も配慮しているという。
「無印良品の『ポリプロピレン衣類収納』は服や小物が無理なく収まる上、うっすら透けて見えるので目視しやすく、取り出しやすさも抜群。イギリスの賃貸住宅はワードローブが備え付けの場合も多いのですが、それよりもフレキシブルですし、季節に応じて調整しやすいのがいいですね。全体の高さを抑えることで空間に広がりが出て、上部にハンガーラックがあっても圧迫感が出ないのも優秀です」(マイク)
寝室収納のもう一つの愛用品が『ステンレスワイヤーバスケット』。時計のケースや、スカーフやマフラーなど頻繁に出し入れするものをストックしている。
「オープンな構造で、中身がひと目で分かるので助かります。巻き物類は着用した後少し空気に晒して乾燥させたいので、通気性のあるこのバスケットが定位置」(チャーリア)

『ステンレスユニットシェルフ』上では、『ポリプロピレン収納ユニット』を取り入れながら日常的に使うものを。大きさや形違いをパズルのように組み合わせることで、機能性も格段にアップ。引き出しを開けるとどこに何があるか一目瞭然で、ものがなくなる心配もない。


数ある手持ちの無印良品プロダクトの中でも、『再生ポリプロピレン入り 頑丈収納ボックス』は、香港時代に購入し、一緒にロンドンへ引っ越しした思い入れの強いアイテム。
「頑丈でスツールとしても使える優れもの。収納であると同時に、家具としての役割も果たしてくれます。最近、ついに英国でも取り扱いがスタートして嬉しい限り」

人も猫も、住まいもともに成長していく

デジタルブランディングとジュエリー制作。専門は異なれど、根本では共通することが多いというマイクとチャーリア。たとえば二人ともアナログな作業を好む点。実は中学時代から無印良品の文房具を使い続けていているのだとか。特に『文庫本ノート』は「軽量で扱いやすく、人生のさまざまなステージで変わらずサポートしてくれている」と惚れ込んでいる。

「余計な装飾がないシンプルを極めたデザインもいい。無印良品のシャープペンは銀座のストアで初めて手に取って以来のリピート品。スケッチはもちろん、アイデアを下書きしたり、発想をビジュアル化するのに一役買ってくれます」(チャーリア)


ライフステージも住環境もガラリと変わったこの四年。最初にケイキー、その後にパフィーと新しい家族を迎えるたびに、この家が変化していくのを体感したと声を揃える二人。
「誰かとともに暮らすようになると、それまで気づかなかったことに目が向くようになります。猫は私たち人間とは違った基準で空間を捉えていて、興味深い。例えばリビングのシェルフの最上段に自然光がよく差し込むことを知ったのは、ケイキーがそこに居座るようになったから。あのベッドはもともと私たちが使うために買ったバスケットなのですが、譲歩の証ですね(笑)」(チャーリア)

人も猫も、歳を重ね成長し、そのライフスタイルは絶えず変化する。「住まいも私たちと同じように、ゆっくりと進化していくものかな」。急がず、じっくり。香港からロンドンへ、人生のステージを軽やかにアップデートしながら毎日のくらしを楽しむ二人。その「ささやかな日々」は続いていく。

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