まるでワインを楽しむように。『産地を味わうコーヒー』5つの個性

無印良品_産地を味わうコーヒー

おたより/レビュー

2026/09/23

食と料理、おしゃべりが大好きな、エッセイストのマッシさん。
日本に住みはじめて20年。イタリア料理も、日本のグルメもこよなく愛するマッシさんに、5つの産地ごとに個包装したシングルオリジンコーヒー『産地を味わうコーヒー』シリーズを試してもらいました。
(文・写真/マッシミリアーノ スガイ)
マッシミリアーノ スガイ
マッシミリアーノ スガイ
エッセイスト。1983年イタリア北部ピエモンテ州生まれ。2007年に日本に移住し、日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。
日本食文化の面白さや魅力、グルメの紹介などの記事とエッセイを年間約400本執筆。
著書に『イタリア紳士、うまいと叫ぶ』(亜紀書房)などがある。

イタリア人にとってコーヒーは、飲み物というより「生きるための呼吸」そのものだ。

朝、なじみのバールの扉を押し開け、カウンター越しにバリスタと視線を交わす。何も言わなくても「カチャリ」と厚手の小さなカップがソーサーに置かれる。立ち上る香りを吸い込み、砂糖を少し落としてスプーンで二、三度混ぜたら、熱々のエスプレッソをクッと一気に煽る。そのまま小銭を置いて「チャオ」と手を振り、店を出る。店に足を踏み入れてから出るまで、わずか2~3分。

そこで愛されるのは、何代にもわたって受け継がれてきた黄金比で配合された「ブレンドコーヒー」である。北のトリノから南のナポリまで、街や店ごとに特長はあれど、根底にあるのは「いつ、どこで飲んでも期待を裏切らない、あのいつもの味」という絶対的な安心感だ。

無印良品『産地を味わうコーヒー ブルンジ』

そんな僕が日本で暮らしはじめ、ドリップコーヒーの豊かさ、そして「シングルオリジン」の奥深さに触れたときは、また新しい世界への扉を押し開けてしまったかのようだった。

単一の産地、単一の農園からやってきた豆には、その土地の標高、土壌、降り注いだ雨、照りつける太陽、果ては農家の人たちの手のひらのぬくもりまで、すべてがそのまま刻み込まれている。「いつもの安心感」という毛布を脱ぎ捨てて、その土地そのものの個性を丸ごと味わう。イタリア人の僕からすると、それはワインのテロワール(気候や土壌などその土地特有の風土)をグラスで楽しむ感覚と同じだった。コーヒーが一粒のフルーツの種であり、豊かな土地の恵みなんだということを、シングルオリジンコーヒーは直感的に思い出させてくれる。

無印良品『産地を味わうコーヒー』

そんなシングルオリジンコーヒーの世界を、身近な日常にふわりと運んできてくれたのが、今回の無印良品のドリップバッグだ。これまではブレンドを中心に親しまれてきた無印良品のコーヒーだが、今回はなんと5つの異なる産地のシングルオリジンコーヒーが、個包装のドリップバッグで登場した。「シングルオリジン」と聞くと、なんだか専門店のカウンターで難しそうな顔をして語るもの、と身構えてしまう人もいるかもしれない。でも、そんな心配はまったくいらない。今日着る服や聴きたい音楽を気分で選ぶように、ただ直感で選べばいいのだ。

5つの個性的な産地を、僕の感覚で少し案内してみたい。

無印良品『産地を味わうコーヒー エチオピア』

まずエチオピア。コーヒー発祥の地が誇る豆を挽いた粉は、袋を開けた瞬間から別格だ。お湯を落とすと、まるで満開の花畑や果樹園に迷い込んだかのような、華やかな香味が立ち上る。「これが本当にコーヒーなの?」と目を丸くするに違いない。晴れ渡った休日の朝、窓をいっぱいに開けて、心地良い風を感じながら飲みたくなる一杯だ。

無印良品『産地を味わうコーヒー ブルンジ』

ブルンジは、実にエレガントでみずみずしい輝きを秘めている。アフリカの小国ながらすばらしい豆を育てるこの土地の味は、赤リンゴやチェリーを思わせるジューシーで明るい酸味が特長だ。午後の明るい光の中で、少し肩の力を抜いて気分をリフレッシュしたいときに驚くほどよく似合う。

ウガンダは、どこか素朴であたたかく、包容力がある。アフリカの力強い大地の恵みを感じさせつつも、味わいはとても穏やか。角のないまろやかなコクは、仕事の合間にほっと一息つきたいとき、そっと心に寄り添ってくれるやさしい友人のようだ。

インドネシアは、唯一無二のエキゾチックな魅力にあふれている。東南アジアの熱帯雨林や肥沃な火山灰土壌を思わせる、独特のハーブのような爽やかさと、深く濃厚なコク。少し肌寒い日の夕方や、どっしりとした焼き菓子と合わせるとき、この重厚な存在感がたまらなく頼もしい。

無印良品『産地を味わうコーヒー グアテマラ』

そしてグアテマラ。この豆の魅力は、静けさとエレガンスだ。とても大人びていて奥が深い。夜、部屋の照明を少し落として、静かに本をめくりながらじっくりと時間をかけて味わいたくなる。

夜もコーヒーを楽しみたい方には、グアテマラエチオピアブルンジのカフェインレスがおすすめ。読書にも映画鑑賞にもぴったりだ。

ドリップバッグにお湯を注ぐ数分間、部屋いっぱいに広がる香りを吸い込みながら、ぽたぽたと落ちる琥珀色の雫を眺める。イタリア流にバールでキュッと一瞬で飲み干すエスプレッソも生涯愛し続けるけれど、こうして一つの産地にじっくりと耳を澄ませる日本のドリップの時間には、何にも代えがたい豊かさがある。

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