ゆらぎに寄り添う。養生日和
寝付けない夜に。脳の仕組みから理解する、スムーズな入眠へ導くコツ

2026/04/10
取材と文・山本加奈 撮影・藤井由依
「ユークロニア株式会社」代表。国立病院機構にて高次脳機能障がいや神経難病のリハビリテーションに従事。現在は、東京の「ベスリクリニック」で薬に頼らない睡眠外来を担当する傍ら、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行い、メディア監修も多数。主な著書に『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)、『すぐやる!行動力を高める科学的な方法』(文響社)、『多忙感』(サンマーク出版)など。
情報が渋滞する、脳の覚醒を鎮める
夜、布団に入っても「なんだかモヤモヤして寝付けない……」そんな経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。現代人によくあるこの悩みについて、菅原さんは脳の仕組みからこう解説します。
「前回の記事でお伝えしたように、私たちの脳は、過去の記憶をもとに『次は何が起こるか』をあらかじめ予測して、実際に起きたこととの"誤差”から学習し、予想外の事態を極力減らすように日々、アップデートしています。
しかし、新しい情報が次々と入ってくる日中は、インプットで手一杯になり、脳の情報整理や予測の更新作業が後回しに。
その結果、寝床に入り、周りが静かになったタイミングで、脳がたまっていた更新作業を一気にはじめようとフル稼働してしまうんです。これが、夜のモヤモヤと覚醒の正体」(菅原さん)。
特に新生活のスタートなどで環境変化が大きい春は、インプットされる情報量が膨大になりがち。本来は日中に、脳が予測を更新できる“余白の時間”をつくるのが理想ですが、なかなか時間を十分に確保できない人も多いはず。
そこで、菅原さんが提案するのが、寝る前に思考を紙に書き出すこと。

「脳で考えているのは実はとても曖昧な記憶。そういった抽象概念を覚えておくためには、たくさんの記憶容量が必要で、脳内に留めておくだけでとても疲れてしまうんです。
そこで、見える形に変換して、脳内の情報の渋滞解消に役立つのが『書く』という行為です」
頭の中にある思考を、紙という“外付けハードディスク”に移し替えるようなイメージで、単語を書き連ねてみる。「もう何も思い出せない」というところまで吐き出せば、脳の渋滞が解消され、スムーズな入眠へとつながります。
書いて手放すための、3つのコツ
日記をはじめてもなかなか続かないという人に多いのが、上手に書こうと無意識に自分に課してしまうこと。しかし、思考を吐き出すために、整った文章を書く必要はありません。頭の中のグルグルを手放すための、書き方のコツを紹介します。
1, 上手な言葉にしようとしない
書き出した紙は、見返すためのものではなく、脳の容量を空けるためのもの。「『なんだかモヤモヤする』といった殴り書きでも構いません。外に出すだけで、脳は整理作業から解放され、寝付きの良さにつながります」
2, 感情よりも“事実”を書く
脳の特性上、感情そのものより、考えの対象となっている「事実」を書くほうが鎮静効果が高いのだそう。たとえば、誰かの言葉が気になっているなら『職場の会話』や『人間関係』といったキーワードなど。「数時間悩んでいたことも、書き出してみれば意外と数行で終わるものです」
3, “アナログ”で手を動かす
スマートフォンではなく、ぜひ紙とペンを。手を動かすという、感覚が伴う身体的な動きが、脳の予測には不可欠だそう。
「無意識のうちに、手の感覚や紙の擦れ、筆圧には感情が表れます。そうした身体感覚が脳に伝わることで、予測が更新されていく。すると、予測と実際の感覚との誤差が小さくなって、脳が落ち着いていくんです」

また、日中に「10秒だけ視線を外して何もしない」時間を設けるだけでも有効。これを『マイクロオフライン学習』と呼び、脳の更新作業をこまめに進めることで、就寝時への持ち越しを防いでくれます。
「自由にかける無地のノートや、お気に入りの書き心地のペンで、 頭の中の“いらないデータ”を手放して、すっきりと眠りにつきましょう」。
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