ゆらぎに寄り添う。養生日和
集中できない、やる気がでない……。休み方を“再構築”して自分を取り戻すコツ

2026/05/27
取材と文・山本加奈 撮影・藤井由依
「ユークロニア株式会社」代表。国立病院機構にて高次脳機能障がいや神経難病のリハビリテーションに従事。現在は、東京の「ベスリクリニック」で薬に頼らない睡眠外来を担当する傍ら、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行い、メディア監修も多数。主な著書に『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)、『すぐやる!行動力を高める科学的な方法』(文響社)、『多忙感』(サンマーク出版)など。
五月病は、蓄積したストレスによるフリーズ状態
気温が本格的に上昇し、夏へと向かっていくこの季節。ものごとに集中できなかったり、無気力感や不安感が続いたり……いわゆる「五月病」のような症状に悩まされている方も多いのではないでしょうか。
「五月に起こりがちなこれらの不調は、こちらの記事で説明した自律神経に関する新しい考え方『ポリヴェーガル理論』を用いて説明することができます」と語るのは作業療法士の菅原洋平さん。
ポリヴェーガル理論では、リラックスモードの「腹側(ふくそく)迷走神経系」、戦闘モードの「交感神経系」、不活発モードの「背側(はいそく)迷走神経系」の三層構造で自律神経が機能すると考えます。
新生活などで緊張が続く四月は、戦闘モードの交感神経系が優位になりやすい時季。続く五月は、蓄積したストレスに加え、急激な気温上昇といった外部環境の変化が目まぐるしく、心身にさらなる負担が。すると、脳は危険な状態だと認識し、不活発モードである「背側迷走神経系」へと切り替わっていきます。
「その結果、心身が動かない、やる気が出ないと感じる『フリーズ状態』に。これがいわゆる『五月病』の正体です。
本来、五月は休息が必要な時季。しかし日本では連休が重なり、アクティブに過ごす方も多く、その反動でエネルギーが枯渇するということにつながりやすいのです。
ただ、裏を返せば五月病は生活の見直しが必要というサイン。自分を疲れさせている行動パターンを振り返り、実は“やらなくても困らない行動”を手放し、生活を再構築する絶好のチャンスです」
内受容感覚に従って、マイルールを見直してみる
五月に不調を抱えやすい人は、普段から「こうあるべき」という考えに無意識にとらわれて、がんばりすぎているかもしれません。
まずはあえて、何かを“やめる”ことから始めてみましょう。例えば、気乗りしない飲み会への参加や、疲れているのに無理して続けている夕食づくりなど、思い切って手放してみる。
「『ダラダラしてしまった……』と感じているうちは、時間を無駄にしてしまったという罪悪感があることの裏返しで、まだ心が休めていない証拠です。

実は『何もしていない時間』こそ、脳が情報を整理して予測を立てるという本来の機能(詳しくはこちらの記事)を果たす重要な時間。だから、何もしないことに、罪悪感を抱く必要はないんです」
また、現代人に多い“健康の追求”を手放すことも休むうえで大切なことだと菅原さんはいいます。
「良い睡眠を取ろうとか、健康のために体に悪いものは食べてはいけないとか、効率よくリカバーするために使っているグッズなどを一度やめてみて、とにかく好きなように過ごしてみる。ここでポイントとなるのが『内受容感覚』に従って行動を取捨選択することです」

『五感』で感じられる『外受容感覚』に対して、内受容感覚とは身体のこわばりや、空腹感、心臓のドキドキ感といった身体内部の状態を捉える感覚。
「情報があふれる現代社会で、多くの人は他者から言われた“生産的”で“良いこと”を自分の生活に実装しがち。でも、やってみないとそれが自分にとって心地良いかどうかわからないですよね。
思う存分やってみたうえで、気持ち良いか気持ち悪いか、内受容感覚の『YES』に従ってください。逆に、手放して後悔するものは自分にとって本当に必要なものです」
これまで生きてきた中でつくりあげてきたたくさんの“マイルール”を、内受容感覚に耳を傾けながら検証していく。ライフスタイルを組み立て直す時間だと割り切って、自分にたっぷりと余白を与えてあげましょう。
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