きほん服
自分の軸、身体の芯|きほん服インタビュー④仲野晶子さん、翔さん(農家)

2025/03/17
きほん服ってなんだろう? 流行がうつり変わっても、いつもクローゼットに入っている服、気がつくとつい手にとってしまう服。そう聞いて、誰しも装いのきほんとなる服が一着や二着は思い浮かぶはずです。着やすくて実用的。くらしに寄り添う服こそが、無印良品が考える「きほん服」です。
「無印良品のきほん服・春」の特集でモデルを務めてくださったみなさんに、それぞれが考える「きほん」について聞きました。六人六様の「きほん」の話。「千年続く農業」を掲げ、環境再生型農業に取り組む「sho-farm」の仲野晶子さん、翔さんが考える「きほん」とは?
——「きほん」と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?
「自分の軸みたいな感じですかね」(晶子さん)
「私は、身体の芯みたいなイメージです」(翔さん)
——暮らしのなかで、「きほん」にしていることはありますか?
「自分で食べるものは自分でつくる暮らしをしたいと思ってこうした農業を始めたので、農的な暮らし、というのが自分のなかのきほんです」(晶子さん)
「野菜をつくっているので、食べることがいちばんのきほんです。自分たちの野菜をきちんと料理するとか、手を込めて料理するとか」(翔さん)

「野菜も収穫したまま放っておけば、どんどん悪くなってしまいます。そういうものをもったいなくしないというのが、私のなかでの仕事のきほんです」(翔さん)
「私の仕事は、人以外の植物や動物の健康状態をよりよい方向に導くことだと思っています。それと同時に、働いてる人たちがその良い生態系の中で、心も身体も気持ちよく過ごしてもらうことでしょうか」(晶子さん)
——生態系の中での「よりよい方向」というのは、例えばどんな状態のことでしょうか。
「作物だけではなく、虫や草もすごく大事な働きをもっているので、そういった野菜以外のところを見て、調和をとっていくことです」(晶子さん)

「観察に始まり、観察に終わります。農家が介在できることは、生態系の中のごく一部だと思っています。その生態系のわずかな変化や、生態系が要求していることにしっかりと耳を澄ませることをもっとも大切にしています」(晶子さん)
——生態系はすべて繋がっているので、ひとつがよくなると、どんどんプラスの循環が生まれやすくなるのでしょうか?
「ひとつがよくても、ほかが弱っていくこともあります。今までの農業は野菜しか見ていなくて、野菜以外のほかの生きものや植物が犠牲になることも少なくありませんでした。だから、物質循環がスムーズになるように、ひとつのものを見るだけではなく、全体の観察を大事にしています」(晶子さん)

「そうですね。すごく難しいので、おそらく一生このトレーニングを積んでいかないといけないでしょうね。それは答えがないからこそ、すごくおもしろい仕事だと思っています」(晶子さん)
「作物が悪くなり始めているような時など、遠くからでも察知できるようになりますよ。やっぱり観察はすごく大事です」(翔さん)
——テレパシーのようなものでしょうか?
「たしかに、テレパシーと言う人もいますが、作物に虫がたくさんつくことで、その作物か虫かが発するにおいみたいなものを私はいちばん感じるんです。ただ、そういう人はあまりいないかもしれません。農薬を使っていると事前に防げたりしてしまうので」(翔さん)

「私にとって仕事と生活は地続きなので、いわゆる畑で動きやすい格好というのが、私にとってのきほんの服です」(晶子さん)
——動きやすさとは?
「身体の動きを束縛しないということ。それから、ある程度強度があることも大事です。デイリーにガシガシ洗うので」(晶子さん)
——気に入ったアイテムは繰り返し買うのでしょうか?
「一着をすごく長く着るので、繰り返して買うことがほとんどないです」(晶子さん)

——翔さんにとって、装いでの「きほん」ってなんですか?
「私も仕事とプライベートの境がなく、泥で汚れた仕事着を着たまま子どもの授業参観に行ったりもします。側から見れば汚れた服と思われるかもしれませんが、私にとっては誇りです。それが私のきほんですね」(翔さん)
——翔さんも同じものを長く着られるのですか?
「そうですね、多少穴が開いても、晶子さんが直してくれたり、自分でやったりして長く着ています」(翔さん)
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