ゆらぎに寄り添う。養生日和
疲労のループを断ち切る。自律神経を整えるための小さな習慣

2026/10/16
取材と文・山本加奈 撮影・藤井由依
くでけん・つかさ。せたがや内科・神経内科クリニック 院長。医学博士。「自律神経失調症外来」「気象病・天気病外来」などの患者のニーズに応えた専門外来を立ち上げ、数多くの患者を診察。わかりやすい解説がSNSやメディアで話題となりメディア監修も多数。近著に『自律神経 これ1冊ですべて整える』(東洋経済新報社)『不調がデフォな私たちの背骨リセット』(主婦と生活社)『気象病ハンドブック──低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア』(誠文堂新光社)など。
寒暖差ストレスが大きい秋の慢性疲労
秋が深まり、気温が落ち着いてくる10月。秋の味覚を楽しんだり、お出かけやアクティビティにもぴったりな季節です。
しかし、過ごしやすい気候の一方で「寝つきが悪い」「疲れが抜けない」「食欲が戻らない」といった不調を感じる人が少なくありません。
「原因はわからないけれど、いつも疲れていたり、だるさを感じている状態が『慢性疲労』。原因は、ウイルス感染などの特殊な理由を除いては、日ごろの小さな不調の蓄積によるものが大半です。さらにこの季節は、寒暖差が引き金となる『寒暖差疲労』も考えられます」と話すのは、せたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅司先生。
慢性的な疲労感の背景には、自律神経の乱れが潜んでいる可能性が。
日中、体を活動的に保つ「交感神経(=アクセル)」と、夜間、体を回復モードに導く「副交感神経(=ブレーキ)」が、1日の中でバランス良く切り替わることで、私たちは日々の疲れをリセットしています。
しかし、ストレスや不規則な生活、寒暖差などによって自律神経のバランスが乱れると、回復モードへの切り替えが上手くいかなくなります。その結果、睡眠が浅くなったり、消化吸収機能や血流の低下を招いたりして、疲れはたまっていく一方に。
「『慢性疲労』も『寒暖差疲労』も、基本のケアは同じです」と久手堅先生。ここからは本来体に備わっている回復力をサポートする、シンプルな習慣を紹介します。
質の良い睡眠へ導く「ぬるめ入浴」と「おじぎストレッチ」
夜、副交感神経が働きやすい状態へ切り替えるために取り入れたいのが、湯船につかる習慣。

「就寝の60〜90分前に、38℃〜40℃前後のややぬるめのお湯に10〜15分ほど、首までしっかりつかりましょう。入浴後、体温が60〜90分かけて緩やかに下がっていくことで副交感神経へスムーズに切り替わり、自然と眠りにつきやすくなります」
入浴時に気をつけたいのが、スマートフォンなどのデジタル機器を浴室に持ち込まないこと。画面の光や刺激は自律神経を乱す原因になります。お気に入りの入浴剤でリラックスするなど、お風呂時間だけでもデジタルから離れて過ごしてみましょう。
いつもシャワーで済ませているという人も、まずは週1回から取り入れてみて、自分のペースで無理なく続けるのが大切です。
また、首や肩のコリを感じている場合は、入浴後背骨まわりをゆっくり動かす「おじぎストレッチ」がおすすめ。

「首や肩のこりが強すぎると血流が悪くなり、疲労物質も蓄積しやすくなって慢性疲労につながることがあります」
① 足を腰幅に開いて立つ
② 息を吐きながら、首から背骨をひとつずつゆっくり曲げるように前屈
③ 背中や腰の伸びを感じながら、自然な呼吸で10秒ほどキープ
④ 息を吸いながら、背骨をひとつずつ積み上げるように体を起こし、元の姿勢に戻る
朝の太陽光で、1日のリズムを取り戻す
夜にしっかり休んだら、朝は規則正しい生活リズムで1日をスタートさせましょう。
「自律神経のリズムを整える基本は、朝起きたら太陽の光を浴びること。日の出とともに起床し、1日をスタートさせるのが、人間に備わる本来の自然なリズムです」。
朝に太陽光を浴びると、脳内で神経伝達物質「セロトニン」が生成され、この「セロトニン」は13〜14時間ほど経つと睡眠を促す「メラトニン」に変化し、夜の自然な眠気を引き起こします。

「寝る時間が遅くなるとリズムが後ろへズレ込み、本来はまだ寝ている時間帯に無理やり起こされる形になるため、疲労感が増す原因に。また、カーテンを閉め切ったままリモートワークを行うような環境も、自律神経が乱れる一因です」
自律神経が何より喜ぶのは規則正しい生活。自然のリズムと同調するイメージで暮らすことで、一日の疲れをその日のうちにリセットできる体へと整えましょう。
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