雨の日に憂鬱になる理由と、気持ちの整え方

梅雨の憂鬱な気持ちの整え方

おたより/ゆらぎに寄り添う。養生日和

2026/06/22

季節の移ろいや、年齢を重ねる中で、日々変わりゆく心と体。そんな誰もに訪れる“ゆらぎ”に耳を傾け、健康をサポートし、“感じ良い”暮らしへと導く養生の知恵を、無印良品からお届けします。今回は、作業療法士の菅原洋平さんに、雨の日が続くと憂鬱になるメカニズムと、心を整える養生法を教えてもらいました。
取材と文・山本加奈 撮影・藤井由依
菅原洋平
菅原洋平さん(作業療法士)
「ユークロニア株式会社」代表。国立病院機構にて高次脳機能障がいや神経難病のリハビリテーションに従事。現在は、東京の「ベスリクリニック」で薬に頼らない睡眠外来を担当する傍ら、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行い、メディア監修も多数。主な著書に『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)、『すぐやる!行動力を高める科学的な方法』(文響社)、『多忙感』(サンマーク出版)など。

雨でも外へ。セロトニンを増やす梅雨の過ごし方

雨や曇り空が続くと、何となく憂鬱になるという人は多いかもしれません。「特に光への感受性が高い方は、日照時間が短くなる梅雨にこういった不調を感じやすく、原因は『体内時計』の乱れによるセロトニンの不足です」と作業療法士の菅原洋平さん。

私たちの身体は、睡眠、覚醒、体温、ホルモン分泌、免疫など、あらゆる生体反応を1日周期でコントロールしていて、このリズムを司るのが『体内時計』。

ただ、ヒトの『体内時計』は、24時間より少し長いため(個人差があります)、何もしないと地球のリズムとどんどんずれてしまい、睡眠障害や自律神経の乱れなどにつながります。

そこで大切なのが、朝、光を浴びて、体内時計をリセットする習慣。

「雨が降るとついつい屋内で過ごす時間が長くなりがちですが、天気が悪くても、意識的に外に出ることが梅雨の憂鬱解消には効果的です。どんよりした雨空の下でも、実は、室内の照明より、外にはずっと多くの“光”が届いているんですよ」と菅原さん。

「網膜には、『体内時計』の調整に関わる光センサー(=OPN4)が備わっていて、視覚的に感じられる明暗に関係なく、特定の波長の光をキャッチし、『体内時計』のリセットを促します。

特に自然光は、照明と比べ、さまざまな波長の光を含んでいるため、たとえ暗く見えても、自然光が届いている屋外に出ることは『体内時計』のリセットに役立つのです」

そして、『体内時計』のリセットと連動して増え始めるのが、“心の安定剤”とも呼ばれるセロトニン

「セロトニンは穏やかな覚醒状態をつくり、予想外の出来事に対しても『まあ、大丈夫』と落ち着いて反応できる土台を整えます。憂鬱な気分やネガティブな思考になりがちなときは、短時間でも朝〜午前中に屋外にでたり、窓際で過ごしてみてください。

外に出るのが難しい日は、LEDのデスクライトを活用するのも手。光感受性の高い方はLEDライトを近くに浴びるだけでも覚醒しやすいという傾向があります。光を浴びながらコーヒーを飲んだり、今日の予定をチェックしたり。意識的に“朝の光時間”をつくってみましょう」

脳の配線を書き換えれば、世界の捉え方が変わる

梅雨に気分が落ち込みやすいという人は、脳の“思考のクセ”が影響している可能性があります。

こちらの記事で解説したとおり、脳は過去の経験をもとに、何が起こるかを先回りして予測していて、それに基づいた反応・行動をとります。この“脳の配線”は文化や育った環境の影響を大きく受けていますが、意識的に書き換えることで、ものごとの捉え方や心身の反応が変わっていきます。

一般的に日本では雨=悪い天気、晴れ=良い天気という言い方をしますが、これは捉え方次第。北欧には『その天候に合う服装をしていれば、悪い天気などない』といった意味合いのことわざもあるんですよ」

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“脳の配線”を書き換えるうえでポイントとなるのは、内受容感覚(※)に働きかけることだと菅原さんはいいます。

「たとえば、頭では雨=憂鬱と思っていても、前述した光を浴びる習慣により、セロトニンが増え、身体が心地良い体験を重ねていくことで、『雨=落ち着く』という新しい“脳の配線”を強化することにつながります」

※内受容感覚:身体のこわばりや、空腹感、心臓のドキドキ感といった身体内部の状態を捉える感覚。詳しくはこちらの記事

一方で「憂鬱な気分を無理に追い払う必要もない」と付け加えます。

「雨の多い地域では、それを生かした文化や豊かさが育ってきたように、暗さや憂鬱な空気感を味わうことも、“脳の配線”を結びなおすのに役立ちます。雨の日は静かな音楽を聞いたり、悲しい物語の本を読んでみたり」

雨の日に窓際で本を読む女性

「梅雨の憂鬱を養生するうえで、そもそも憂鬱を毛嫌いするのではなく、その中で自分なりの過ごし方を見つけて、『これでいい』と受容していくプロセスが大切なのです」

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