スタッフのいえ
親子三代で愛着を継ぎ、手を加えてきた部屋

2026/06/12
今回は、住まいに手を加えながら、愛着を重ねていくくらしが印象に残る、林さんを訪ねました。
戸建て住宅/七人ぐらし
文・内海 織加/写真・幸喜ひかり
(本人提供画像を除く)

林さん
無印良品の空間デザイン室で、オフィスなどの空間デザインと法人向け商品開発のチームを統括。両親、兄、奥さんとお子さんふたりの七人ぐらし。
ともに時を重ねる。オーク無垢材 キャビネット

林さん家族がくらす一軒家は、交通量のある道路から一本路地を入った珍しい立地。ほんの少し奥まっているからか、街の喧騒から離れたような静けさがあった。
外装からかなりの時を重ねていることが伝わるモダンな建物は、母方のお祖父さんが、およそ六十年前に建てたもの。

林さん自身も、この家で生まれ育った。
家族を持ってからは賃貸マンションに住んでいたが、実家を今後どうしていくか、家族で話す機会があり、長く住んだ愛着のある家と場所を自身で残し、次の世代にも繋げていきたいと、この家へ戻ることを奥さんと両親に持ちかけると、どちらも賛成してくれたという。
そして約三年前、この家に戻り、両親と兄、そして自身の世帯が同じ屋根の下でくらす、新たな日々がはじまった。

再びこの家でくらすにあたり、林さんは建築家の父とタッグを組んでリノベーションに取り組んだ。 三十年ほど前に一度、父の設計でリノベーションをしているため、建物としては二度目の大きな改修工事。
建て替えではなく、リノベーションを重ねているのには理由がある。
「実はこの物件、土地の制約からリノベーションしかできないのです。ですが、私たちが住むには静かで採光や風通しも良く、とてもくらしやすい。まちに愛着もあるので、できるだけ長く、この家に住めたらいいなと思って」

玄関には、斜めに張られたフローリングと、味のある扉が並ぶ玄関収納。リノベーションと言っても、がらりと大きくデザインを変えるのではなく、元の素材や設えを尊重して残そうとしていることが伝わってくる。
「三十年ほど前に、父が手がけた空間が気に入っていたので、生かせるところは極力そのままに、くらしかたに適応するべきところや、傷んでしまったところを修復できたらと思っていました。玄関も、当時職人さんが苦労して張っていたことを聞いていたので、フローリングを全面張り替えにはせず、なるべく残して行きたくて。
手間はかかるけど、生かすところは生かす、という方針に共感してくれる大工さんと出会うことができて、本当によかったと思っています。
これからのくらしに合わせて、一階の和室を洋室仕様にするなど、大きく変えたところはありますが、大黒柱や建具はそのまま残しました。これまで使っていた扉やドアノブなども極力残し、場所を変えて再利用しているんです」



両親がくらす一階は、和室だった頃の名残もありつつ、そこに個性的なデザイナーズ家具が置かれていることで、和モダンな空間に整えられていた。
壁際には、十年くらい前から使っているという『スタッキングシェルフ』がL字に組まれ、建築や歴史、画集などの蔵書がぎっしり。そのラインナップの幅広さに、お父さんの興味の広さと人柄がにじむ。






今回のリノベーションで、一階のために用意したシステムキッチンもまた、無印良品。そして、その脇に置かれたワゴンも、母親が自ら購入してきた無印良品のもの。ダイニングと寝室エリアを分けていたのは、十年くらい前にオーダーして使い続けている、ガラス扉がついた無印良品の食器棚だ。
さらには、部屋の隅に鳩時計があったり、『やわらかポリエチレン ケース』がごみ箱として使われていたり。
無印良品のものが、くらしの中に気持ち良く混じり合っていた。







林家には、長い年月をこの場所で積み重ね、経年変化による“味”をまとった無印良品の家具がいくつも見られる。彼だけではなく、父親をはじめとした家族もそれぞれ、無印良品の家具を好んでいたそうだ。
「十年くらい前から玄関で使っている『無垢材 サイドキャビネット』をはじめ、今回のリノベーションをする前から使い続けてきた無印良品のものは、多いですね。いま思い返してみると、この家の中で無印良品のものがひとつもない部屋は、ないかもしれません」

好きなものに囲まれた基地。脚付マットレス

クラシックな階段を上がり、林さん家族がくらす二階へ向かうと、左手には彼の仕事部屋があった。
ここは、元々は子どもの頃にふたりのお兄さんたちと過ごしていた部屋。ここへ新たに一枚壁を設け、書斎へと改装した。
前にくらしていた賃貸の住まいは、ここよりもずっと狭かったため、仕事をするときには近所のカフェやコワーキングスペースなども利用していた。
いまは専用の部屋ができ、仕事もしやすくなったという。

部屋に入ってすぐ目に入ったのは、パソコンなどが配された大きな作業机。
大きなモニターを真ん中に置いていても、まわりにはゆったりと余白があり、散らかりがちなノート類や小物などを、おおらかに受け入れてくれる。
「これは、広島県の山で育ち、未利用になっていた栗の木を使うという企画で販売された、丈夫な無垢材テーブルです。ワークデスクは広めが好きなので、テーブルをデスクとして用いています。まだ数年ですが、これから育っていくのも楽しみです」








そして、デスクの反対側で全面を占めていたのは、またしても『スタッキング シェルフ』。ここへは主に、仕事の参考資料として読んだ書籍や雑誌、好きで買い集めた漫画やアートブックなどが収められていた。
その使いかたにもグリッドごとに、林さんなりのゆるやかなルールがある。
扉の内側にしまう、表紙を面出しして飾る、高さを揃えて本を並べる、引き出しを収めて小物を整理する。
それが、視覚的なアクセントや抜け生み、使い勝手の良さにも通じていた。





スタッキングシェルフの足元には、この仕事部屋のために新たに買ったという『脚付マットレス』があった。しかし、ベッドというよりもソファに近い設え。
「どうしても作業が夜遅くまでかかってしまったり、出張前には早朝に家を出なくてはいけなかったり。そういうときは、妻や子どもたちを起こさないように、ここで寝ることもあります。あとは、リサーチや企画のために本を広げて集中したり、ちょっと休憩をしたいときにも、この場所に腰掛けるのがちょうどいいんです」
この部屋の『脚付マットレス』はベッドだけではない、いくつもの役割を持ち、使う場面や時間によって、求める用途を自由に、やわらかに受け止めていた。




部屋には、作家によるアートピースがあちらこちらに置かれ、その解説をしてくれる林さんの声色からも、創作物が好きだということが伝わってくる。
好きなものを散りばめたこの部屋は、林さんにとって、単なる仕事場ではなく、個に戻って感性を磨ける空間なのかもしれない。
家づくりを自分ごとに。やわらかポリエチレン ケース

二階のへ階段を上がった逆側にある、もうひとつの部屋は、広々とした空間。
手前には家族で食事をするダイニングテーブルがあり、奥にはテレビを見たり寛いだりするソファも並ぶ一方で、一角にはお子さんの学習机も置かれている。
さまざまな要素が、高い天井の大きな部屋の中で、おおらかに混じり合っていた。

窓際の壁には『スタッキング シェルフ』が横に長く設置され、その上には小さなだるまや民芸品がずらり。
それに混じって、紙粘土や折り紙でつくられた生き物のオブジェがいくつも並べられていた。聞けば、それらは小学校一年生(取材当時)の息子さんによるものだそう。
ダイニングテーブルが置かれた一角にも、いろいろな作家のアート作品に混じって、息子さんがキャンプに行った思い出を描いたものや、娘さんが二歳のときの絵もフレームに収まり、ダイニングの壁を彩っている。




お子さんの創作欲を頼もしく見守っているのは、林さんだけではないという。
「息子はつくることと生き物が大好きで、よくいろいろなものを創作しては見せてくれるんです。人形作家の長兄も一緒に遊びながらいろいろ教えてくれているみたいで、最近は骨格を意識して生き物の造形をつくるようになりました。水彩画を描くのが好きな父も、息子に色の出しかたや塗りかたを教えてくれていて。
子どもたちの作品でいいなと思ったものは、できるだけ飾るようにしています。次々に新作を生み出すので、すべては飾れないんですけどね」








家族みんなで最も多くの時間を過ごすリビングのあちらこちらには、手づくりの生き物たちが、ところ狭しと並べられていた。
それらが、単に置かれているのではなく、他の民芸品やオブジェに並んで大切に飾られているというのは、つくり手にとって、きっと誇らしいはず。
この空間は、子どもたちに注がれる愛情と、あたたかな眼差しで溢れている。



『スタッキング シェルフ』の中やソファの下には、さまざまなサイズの『やわらかポリエチレン ケース』が収まっていた。
その中身は、子どもたちのおもちゃやぬいぐるみ、シールなど。ケースの一つひとつには、子どもが自ら書いたラベルが貼られ、自分で片付けができるようになっている。
よく見れば、その文字にも成長の跡。
「最初は大人が下書きしたものをなぞっていたのですが、長男は小学生になって、自分で上手に書けるようになったんです」




まだ文字を書くことができない頃から、子どもにラベルの文字を書いてもらっていた本当の狙いはきっと、片付けだけではない。
それは、林さんが仕事で大切にしていることに通じている。
「いまは、法人向けに空間の提案をしています。オフィス空間をつくるプロジェクトを多く担当していますが、その時に大切にしているのは “一緒につくる” こと。天板を塗るとか、フローリングにオイルを塗ってもらうとか。なんでもいいので、みんなで一緒に手を動かすことで、クライアントにも従業員のみなさんにも愛着を持ってもらうことが、空間づくりには大切だと思っているんです」
自分ごとにする。それが、愛着を持ち、長くその場を育んでいくことに繋がるという。


そういえば、と教えてくれたのは、林さん夫妻が結婚したばかりの頃のエピソード。
父親の意向で、この空間の柱をモスグリーンからクチナシ色に、家族みんなで塗り直したことがあるという。
「上の方はうまく塗れなくて大変だったよね」と、思い出を振り返る夫婦の会話。
林さん自身もこうして手を動かしながら、空間への愛着を育んできた。

変えながら、使い続ける。スタッキング シェルフ

ご両親の部屋にも、林さんのワークスペースにも、そして家族が集うリビングダイニングにも、共通して置かれていたのは、『スタッキング シェルフ』。
林さんも無印良品の家具の中で最も好きだというが、かつて無印良品で働いていたこともある奥さんにも好きな家具を聞いてみると、「スタッキング シェルフですね!」と即答だった。
その魅力を林さんは、どこにでも置けることだと語る。
「好きなところは、シンプルでなんでもはまるところ。グリッドの寸法と板の厚みが絶妙だから、壁一面に置いたり横長に広く設置したりしても、圧迫感があまりないんです。スタッキングシェルフは、製品が誕生してから十九年くらい経つのですが、基本形がほとんど変わっていません。オプションは増えていますけど、ながく変わらずに愛されているってすごいですよね」

父親も含めて、林さん一家のみなさんが惚れ込み、場所や使い方を変えながら、愛用している『スタッキング シェルフ』。林さんには、ながく使い続けているからこそ、感じている魅力があった。
「家族が増えたり、子どもが成長したり。そういう変化の中でも、無印良品の製品は、生活にも家の大きさにも合わせてくれる気がしています。
『スタッキング シェルフ』は、特にそういう良さを感じますね。気分転換として模様替えに使うこともできますし、長い目で見たときにも、ライフスタイルに寄り添ってくれるんです。まさにくらしの相棒です!」




父が書架として蔵書やレコードを並べ、自身が仕事の資料と書籍や漫画を収め、子どもたちがおもちゃや絵本をしまう。
基本的には同じものでありながら、組みかたを変えることで、それぞれがしまいたいものを、しまいたいように収められる。
その懐の深さが、『スタッキング シェルフ』にはあるという。




リビングダイニングでは、『スタッキング シェルフ』の天面を飾り棚として使っている。
しかしよく見れば、ひとまわり小さい白い板を挟み、『スタッキング シェルフ』と同サイズの杉材を置くというひと工夫が施されていた。
これも長くスタッキングシェルフを使い続け、良さを十分に理解しているからこそ思いついたカスタマイズだ。
「手を加えたり付け足したりしながらアップデートしていくと、さらに愛着と使用感が深まります」






リノベーションで空間をきれいに整えたり、インテリアを選んで配置したりするだけでなく、家族みんなで空間をつくり、子どもたちの成長を愛しみ、思い出を重ねながら、中身も含めて「家」を育んできた、林さん一家。
家というくらしの器はそのままに、使い方や中身を柔軟に変えて、大切に使い続ける。
そのあり方は、親子三代がそれぞれの方法で愛用するスタッキングシェルフにも、どこか通じるものがあった。
家も人も、ともに時を重ね、変化する。
林さん一家は、それに寄り添い楽しみながら、きっとこれからも、空間とくらしを更新し続けていく。
「家の中に、おじいちゃん おばあちゃんがいて、おじさんがいて。子どもたちの目には、このくらしがどう映っているんでしょうね。
定期的に手を加え、かたちを変えながら住み続けてきた我が家ですが、子どもたちがもう少し大きくなった頃には、もう一回くらい簡単なリノベーションをするのかな。
どうやって進化させるかは、これから考えたいと思います」

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